「山なかま・シリウス設立記念山行」 

  〜谷川連峰・苗場周辺散策と稲包山〜

岡田 捷彦


<ムタコ沢ノ頭を登る>

[3月15日(土)、晴のち曇]
集合場所は上越新幹線上毛高原駅、車組、列車組でそれぞれ向かう。小生は列車組、それも鈍行列車。新幹線では1時間15分ほどだが、高崎、沼田と乗り継いで3時間30分の長丁場。最近の上越方面への山旅は車利用が多いようだが、その昔は上野発23時55分長岡行がほとんどだった。その夜行列車も無くなってもう十数年。思えば、初めて上越線に乗ったのは高校3年生の春、マチガ沢の雪上訓練山行だった。明け方の土合駅の狭いプラットホームに溢れんばかりの登山客が降り立った光景がよみがえる・・。昔日の古い記憶。車窓から北上する桜花や見慣れた上信越の山々を楽しみながら集合地へ。

上毛高原駅で赤澤氏の出迎えを受け、宿泊先の苗場浅見・グルッペ・ネージュ山荘(赤澤氏の共有別荘)へ向かう。三国トンネルを越えた街道際からキャタピラ雪上車に乗って5分ほど、瀟洒な3階建てのログハウス。4人の仲間で傾斜地を整地し、材木は鎌倉でカット、毎週のように通って苦労して建てた作品。天井の太柱に「上棟昭和49年」と明示、歴史を感じる風格ある山荘であった。
今年は積雪が多く、周辺の建物の多雪による被害も目立つ。既に先着した大塚氏は屋根の雪下ろし、川崎氏は急遽参加できなくなった小室シェフに代わって夕食の下準備中。恐縮ながら料理は女性陣にお任せし、その他の面々は付近を散策したり、スノーモービルに交互に乗ったりして夕食までのひと時を楽しんだ。

夕食のメニュー(レシピ付き)は小室氏の指示どうり、「すいとん、モヤシ炒め、サヤエンドウの卵とじ、まぐろ納豆、サラダ」。その他各自持参の合鴨、マリネ、カマンベールチーズ、さきイカ、ナン・・・。飲物もビール、日本酒、焼酎、ワイン・・・と何でも有り。ハッピー、ハッピー。大塚氏の司会で途中質問OKの自己紹介から始まり、山の歌へと盛り上がり実に楽しい一夕。翌日の天気、行程を気遣い、20時消灯。夜半みぞれ模様。

[16日(日)、曇のち晴、午後曇]
起床5:30、朝食はおじや、飲んだ翌朝に絶好のメニューである。昨晩は天候を心配したが、何とか持ちそうな気配。駐車場まで歩いて10分ほど。3台の車に分乗し、三国トンネル際の登山口まで数分。地図を見ると三国峠まで夏道は谷沿いにジグザグに登っているようだ。今は雪に埋もれ、谷筋の残雪はまだ2m近くはあるだろう。最近の踏み跡に従い、ブナの樹林帯の右岸側を登り出す。踏み跡は急登して行くようなので、峠の鉄塔に向かってトラバース気味に登る。右下は急傾斜で谷へ、早朝の北斜面なので途中でアイゼンを装着する。三国峠まで1時間25分。峠の権現堂は雪の中、鳥居の頭だけが出ている。左手(北方)は立派な三国山,大源太、平標へと続く。K氏はショートスキーを此処にデポ。
 目指す稲包山は右手、西南方への稜線の先。リーダーから「雪庇に気をつけるよう」の注意を受ける。崩壊部を避けながら、所々出ている夏の笹道を辿って最初のピーク・長倉山(1439m)に着く。ほぼ360度の好展望。東方近くの谷川岳は雲の中だが、その先、武尊、赤城、榛名、浅間は春霞の中。西方、木立の先は苗場だ。
ここからいったん大鉄塔の先まで降り、少し雪庇の張り出した雪のピーク(ムタコ沢ノ頭、1447m)へ登り返す。この手前で、O、H、Sの3氏は体調を考慮し引き返す。雪の急斜面を乗り越し、なだらかな雪稜を辿って1511mキワノ平ノ頭に着く。時刻は10:50。予定時間より約50分の遅れだが、距離は未だ半分地点。この先アップダウンは少ないものの2時間近くは掛かるようだ。帰路の時間を考え、ここで早めの昼食を摂り下山することに決定した。

長倉山まで一気に降る。途中K氏の大腿筋が吊る。水分不足もあったようだが、運動不足や久しぶりにアイゼンを付けた時など異なった筋肉に負荷が掛かり、その結果起こる場合もあるようだ。思わぬトラブルで違和感があるという。せっかく峠まで荷揚げしたスキーをS氏に譲ることになった。思わぬ好運が訪れたS氏、恐縮しながらも見事なスキーさばきで滑り降りて行った。    
峠からの降路を、一部夏道の見える谷筋近くを降りて行く。前方を歩いていたNさんがスノーブリッジの中に突然姿を消す。「一瞬の出来事」。リーダーが駆け寄る。下の水量が少なかったようで、直ぐに立ち上がり、事なきを得る。思わぬハプニング、春山の谷筋の危険のひとつ、貴重な経験であった。登山口着14:00、途中で引き返したので、予定より早い帰着。猿ヶ京の共同浴場・三国館で汗を流した後、上毛高原駅まで送っていただき解散する。

今回の記念山行は、若き日の思い出が蘇り、そしてまた新たな仲間との出会いという思い出に残る、小生にとっても記念すべき山旅であった。

 


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