日程: 10月26日~28日
メンバー: 鶏冠尾根ルート 藤野(L)、 赤澤
戸渡尾根ルート 斎籐(光)、 斎籐(幸)
報告: 赤澤

 

(鶏冠尾根ルート)
 奥秩父の甲武信岳は自らチャンスを放棄して頂上を踏まなかった山だ。 11年前、東沢・釜の沢を詰めて甲武信小屋まで辿り着いたのだが、 頂上まであと15分と聞いたものの、100名山を目指しているわけでもないし、雨中でもあり(その内又来る事もあるだろうからいいや)と敢えて登るのを拒否し、今日まで至ってしまったものだ。
 その内登ろうと思いながら、一般ルートから登るだけでは面白くないなあとイマイチ気が乗らず、ずっと後回しになっていたものだが、今回の藤野さんの企画は鶏冠尾根というバリエーションルートを辿るというので、それなら面白そうだと参加する事にした。
 26日(金)夜7時、藤野車で西八王子出発、中央高速道・御坂一宮ICを出て一路甲斐から秩父へと通じる秩父往還(別名・雁坂みち)を走り「道の駅・みとみ」にテントを張る。ここは屋根もベンチもあって、なかなか快適なテン場である。
 27日(土)5時起床。夜中には星も見えたのだが、どんよりと曇っている。天気が崩れるのは明日からという予報を信じ、降らないという思い込みの下、6:15道の駅の先「西沢渓谷蒟蒻館」駐車場を出発した。紅葉シーズンとあり、西沢渓谷散策のハイカーも多い。
 6:45近丸新道を登る斎籐さん達と別れ、東沢に架かる二俣吊り橋を渡り上流部を見上げると、まるでゴジラの背のような鶏冠尾根のギザギザが目に飛び込んできた。山梨百名山に選ばれているらしいが、ここから見上げるゴツゴツした岩尾根の景観が素晴らしいからに違いない。山岳図書の名著とされる「山と渓谷」の著者田部重治はここからの眺めを、大正5年に笛吹川を遡行した際に「前方には鶏冠山がほとんど登攀不可能の絶壁を以て流れを威圧している」と簡潔に表現している。見応えある景観にハイカー達は皆 橋の途中で立ち止まりカメラを構えている。
 橋を渡ってすぐに東沢の河原に下りた。橋の上のハイカーの目を意識しながら、渡渉地点を探し、ケルンのある箇所で持参したスリッパ式ビーチサンダルに履き替えた。夏場なら登山靴でじゃぶじゃぶと入ってしまう人もいるようだが、この時期濡れた靴を履き続けるのは気色悪い。藤野さんは全行程ラバーソールの渓流シューズで押し通すらしい。川巾はせいぜい数メートル位のものだが、ふくらはぎまで浸かっての渡渉は水圧もあり、転けたらみっともないしそれなりに緊張する。サンダルはかかとが固定出来るようになっていてなかなか具合がいい。これ500円です。右から鶏冠谷が合流する地点で三度目の渡渉をし、そこで登山靴に履き替え、いよいよ鶏冠尾根に取り付く。
 甲武信岳のバリエーションルートと言うが、途中の鶏冠山が山梨百名山に選ばれた事もあってか、道標も整備され、赤テープも煩い程に目立ち、何カ所かガレていたものの踏み跡は明瞭で迷うような箇所はない。視界は次第に悪くなり、やがてポツポツと雨が落ちてきた。9時丁度、雨具を着込む。天気予報官の顔が憎たらしく思うのはこういう時で、八つ当たりしたくなる。 「嘘つくな!!」。
 岩稜帯の雨は滑るので始末が悪いが、ここはどこもホールドがしっかり取れるので難しい事はなく、天気良ければ楽しい岩場となるだろう。藤野さんはこれが3回目の鶏冠尾根だが、5年前は2度ロープを出したという。今回は前回にはなかったという真新しい鎖も付けられており、2人の足も揃ってロープ無しでガンガン登る。視界はせいぜい30㍍位しかなく遠方どころかすぐ前方の岩峰も濃密なガスに遮られて何も見えない。折角のコースがこれではガックリだ。やがてガスの中に突然衝立のように切りたった岩壁が現れ前方を遮られたが、標識には第三岩峰と書かれていた。ここは右の急斜面を下って大きく巻き、登り返した狭い尾根を左手岩峰に登ると、そこに鶏冠山の標識が立っていた。時間は10:40。70歳にしてはまずまずのペースと言えるだろう。帰宅後調べた所、本当の鶏冠山山頂はここではなく、さらにその先の甲武信岳寄りのピークになるのだそうだ。
 赤テープが結ばれ、踏み跡がハッキリしたのは、ここまでで鶏冠山からはシャクナゲやイヌツゲの濃密な藪こぎとなり、所々に見つけ出す赤テープは変色し誠に心許ないものとなった。踏み跡もすぐ途切れてしまう。雨はいつしかみぞれ交じりとなり、手袋はもうびしょびしょで冷たくて仕方ない。靴の中も同様で、これなら東沢の渡渉も別にサンダルに履き替えることなく、そのままジャブジャブ入っていても良かったのではと思わず苦笑いする。
 踏み跡は不明瞭となり尾根を外さないように気をつけているが、どうしてもトラバースしなければならなくなった時は、元のルートに戻るのがなかなか上手くいかない。暗くなってしまったらもう動けないだろうが、幸いにまだ昼過ぎだ。焦らず慎重にルートを探し、探し先へと進む。シャクナゲの藪はなかなかしぶとい。ハイマツ、根曲り竹、イヌツゲ等と負けず劣らずの横綱級だ。掻き分け、潜り、しばし立ち往生という場面もあって、なかなか気が抜けなかったが、登るにつれ次第に藪が薄くなり、植生が変わったかと思うと、木賊山への登りとなった。いかにも奥秩父らしい樹林帯、落ち葉にはうっすらと雪が積もり滑り易い急登を詰めると、突然登山路に飛び出した。14時丁度だった。ヤレヤレだ。
 甲武信小屋に入ると、先着していた両斎藤さんに「早かったわねえ。良かった、良かった」と歓迎された。芯から冷え切っていた身体は、ストーブの前に座ってもなかなか暖まらず、 いつもなら飛びつくビールを飲む気にもならないのだった。
 28日(日)4時半起床。質素な朝飯を済ませ、霧雨の中空身で甲武信岳を往復する。強風の頂上付近は昨日の雪で小規模ながら樹氷が出来ていた。斎籐幸子さんもここは初めてだそうな。何はともあれ悪天候ながら登りそびれていた甲武信岳に無事登る事が出来てまずは満足、いい山行だった。このルートは天気のいい日にもう一度挑戦してみたいものだ。途中「花かげの湯」(500円)に入りサッパリして帰路につく。天気のせいか空いていた。
   
<コースタイム> 
10月26日 西沢渓谷入口の駐車場(6:15)―近丸新道入口6:45―東沢―鶏冠尾根に取り付く
―鶏冠山(2,115m/10:40-50)―木賊山(2,468.5m/14:00)―甲武信小屋(14:20/宿泊)
10月27日 甲武信小屋(6:00)―甲武信ヶ岳(2,475m/6:15-20)―甲武信小屋(6:35-40)―
戸渡尾根―徳ちゃん新道―徳ちゃん新道入口(9:45)―駐車場(10:20)
 
 
鶏冠山   甲武信岳

 



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