一ノ瀬川・大常木谷(大キツネ谷?)遡行

福寿新一

2005年6月11日  それは集合時間の時から始まっていたのかも知れない。食当川崎氏とSさんが来ていない。食糧が無くては出発できず、次の電車でもSさんが来ない。もう1台待つも来ず9時10分やむをえず出発する。まあいい男ばかりの気楽な旅よ・・・。
9時40分林道下降点着。思いの外険しく一度降りたら登り返すのはちょっとごめんと言いたくなるような120メートルの下り、最後1ピッチは懸垂する。

10時30分遡行開始。すると間もなく巻き道も無いゴルジュに12メートルのトロ。なにこれ?と思うまもなく、沢の申し子達、柴村、西山、川崎、吉村、の各氏は次々と泳ぎだす。こんなはずでは??家で案内書はみてきたのに〜!
最後になってはマズイなと福寿も淵をヘツルが、長い間水で磨かれた側壁はツルツルでホールドが少なくやむなく入水するが遅々として進まず、そのうち疲れて水を少々頂いた。もしかして足が着くのではと立ってみたが何処までも水であった。あと2メートル、もう立てるだろうと思うが足は届かずアップアップ。対岸で立っている西山さんに“たすけて”と言うと蜘蛛の糸がスルスルと下りてきた。掴もうともがくが無慈悲にもザイルは水の中に沈んでいった。掴んだのと足が地に付いたのとどちらが先だったのだろう。何とか助かった。振り向くと長岡さんが立ち泳ぎでザイルを捌いている、余裕〜。

少し行くとこれ又先ほどにもまして狭いゴルジュ、先の4人は果敢にも突っ込んでいくが自分はあっさりと巻いた。河原に降りる頃清水さんが“これは大常木谷ではなく一ノ瀬川本流ではないか”と言う、そう言えばすぐに出てくるはずの出会を経ていない。突破組も合流し遡行すると右に分ける沢の出会あり。12時であった。ここらしいと思うも1時間半も歩いているのだから、次の竜バミ谷ではないかとの思いもあり柴村さんと清水さんが偵察に行く。我々は山菜取りに興じ川崎さんは優雅に釣り糸をたれる。

二人が帰り大常木谷出会と判明するも時間も遅く遡行断念、本流を10分位遡り西山さんが見つけたケルンから右岸を急登70メートル、稜線から両側はるか下に流れが見える。岬のように突き出した岩山を流れが巻いているようであった。2時位だったろうか。駐車場まで2,30分の林道下りとおもいきや、2,3分も歩かず車が見え出した、なんだこりゃあ〜。 駐車場を要に扇の淵を歩いてきたのだ。下降点も判ったし、もう一度リベンジするしかない。本日の敗因は出発時間が遅かったこと、と、ここにいないSさんに責任を擦り付け一応の収束をみたのだが・・・。

後につらつらと考えてみるに、今朝4時20分ケイタイの目覚ましに起こされ車をとばし2時間足らずで奥多摩駅着。寝ようと思うも寝られず、ウオーミングアップにと河原に降りてみる。澄んだ水に増水は感じられず、そっと水に手を入れてみた。長く入れていると結構冷たい、少々季節が早いのか。登って橋の袂にある氷川神社に参ろうと思いつき、ポケットに手を入れるが財布も小銭入れも無く、道端でそっと心の中で手を合わせ今日の無事を祈る・・・。が・・・気が引けた。神様は賽銭くらいのことでつべこべ言うほど度量は小さくないだろう・・・。しかし・・神のお仕えたるコンコン様は少しも見逃さず扇を高く掲げ“さっ”と横に振ったのだろう、その時から今日の運命は決まっていたのだ。<命は辛うじて助けるがニュウコクビザは発給停止>の下知と相成った次第。 ぬ? んじゃ俺の責任か?姿も現さず人間を翻弄するとは流石に大木常、くわばらくわばら。

4時東京山楽会御用達?の水根沢の小屋に入る。川崎シェフのおでんと次から次と出てくる西山シェフの手料理に舌ずつみを打ちながら、本日の反省から、歌各種、沢登り失敗談、果ては散骨論まで、多義にわたる話題に楽しい夜をすごした。

6月12日 4時20分昨夜リセットし忘れた目覚ましが鳴り出した。あわてて止めるが皆起きてしまったみたい。 すみません。 今日はリタイヤと心中決めていたが、皆が福寿の行けそうな沢を模索してくれる優しさに行動を共にする。 水根沢遡行となる。7時すぎ入渓、土砂で谷が埋まった話は昨夜聞いていたが、水根沢ならぬ濁り水沢となり各所で土が堆積し田んぼ状になっていた。以前と渓相が違うみたい。胸まで入った滝壺は左の岩をシュリンゲでヘツリ昔の記憶がだんだんと蘇ってくる。以前滝壺に叩き落された5メートル樋状の滝は何故か見落とす、無意識に高巻いたのだろう。2段15メートルの大滝は右を大きく巻いた。ザイルをフィクスしようとしたがその必要は無かったみたい。

山葵田まで来ると空が開け日が当たった。一休みしてさらに行くと大窪沢あたりか左に分ける沢の上流が崩れたらしい痕跡あり。3メートルの高さで沢を遮りわたるモミジの梢が泥だらけになって土石流のすさまじさが窺えた。そこを過ぎると沢は清流を取り戻し次々に出てくる小滝は胸、腰まで水につかり、ベテランはわざと滝壺に落ちたりして楽しみながらの遡行。
半円の滝は皆楽しそうにアタックするが、自分は本日パス。それでも今日来たお陰でトラウマの呪縛に苦しむことなく又沢を楽しむことが出来るだろう。皆さんのおかげです。これに懲りずに又宜しくお願いします。

 


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