甲斐駒ケ岳〜鋸岳縦走(2006年9月)

藤野孝人

計画すること数知れず、この初秋、仲間3名でようやく念願がかなった。9月29日(金)の夜、車にて出発。高速のSAにて仮眠。30日の朝、戸台に入る。戸台大橋の前でメンバーと荷を下ろし、何年ぶりかで戸台河原に駐車する。戸台大橋に戻ると、ゲートの管理人がコーヒーを振舞ってくれた。朝のコーヒーはありがたい。予定通りバスに乗り、北沢峠へ向う。高度が上がるにつれ、これから縦走するギザギザの鋸岳が大きくなり、さらに高度があがると、双児山から甲斐駒の稜線と、鋸岳の「鹿の窓」まで見えた。「あの稜線を縦走するのだ!」と意欲が高まる。運転士はサービス精神旺盛で、花の咲いている個所や展望のよいところで、一旦停止して説明してくれる。

北沢峠より、まずは双児山を目指す。双児山に近付くと展望が一気に開ける。振り返ると仙丈が大きい、はるか後方には北アルプスも見える。これから向う駒津峰―甲斐駒も見事なながめだ。双児山より駒津峰に登り返すと、丁度お昼時で広いピークは満員御礼。我々も適当な場所を見つけて、周囲の山々を眺めながら昼食とした。甲斐駒には一旦下って登り返すが、久しぶりのテント山行はやはり重い、一本を繰り返してようやく甲斐駒ヶ岳に到着。雪のない甲斐駒ヶ岳は十数年ぶりだ。

少し休んで、鋸岳へ下り始める。これまでの登山道と違って踏み後は薄くなるが、赤テープが随所にあり分かりやすい。眺望がよく、前後に人の姿がないのもよい。急な岩場を下る個所で、真新しい鎖が設置されていた。本来ならロープを出したいところだ。荷が重いことから躊躇なく鎖を使って下る。やがて大きく鋭い岩峰が見える。これを巻いて下ると、間もなく左下に石室の屋根が見えた。小屋への分岐にペイントがあり、これを下る。いつ頃誰が作ってくれたのか、しっかりした石積みの壁は見事なものだ。一応屋根もある。中に入ると名古屋から来たという、先着のご夫婦がテントを張っていた。我々はその横に張らせていただく。張り終えて二名で水汲みに行く。かねて調べていた通り、石室より少し鋸岳方面に行き、ザレ場を10mほど下ると左へ踏み後がある。急な踏み跡を10分ほど下ると水場に到着した。しかし水は細く、小さなコッヘルを使って汲むのに時間がかかり、往復に50分も要してしまった。戻るとあらたな男性二人組みが到着していた。彼らと真っ暗になるまで山の話しをする。この夜、石室はテント3張り、7名であった。

翌朝、飲みすぎた訳ではないが寝過ごしてしまった。きっと前夜の寝不足のためであろう。朝食の支度をしていると、名古屋から来たというご夫婦が「お先に」と鋸岳を目指して出発した。6時過ぎである。次いで男性二人組が「お先に」と甲斐駒を目指して出発した。我々は予定より大幅に遅れて7時の出発となってしまった。稜線のルートは明瞭、中ノ川乗越を見下ろすピークで、念のためハーネスを付け、ヘルメットも被る。乗越より地層が変わり、くずれそうなガレのルートとなる。剣の池の谷ガリーよりはましだが、落石が起こりそうで、優しく足を運ぶ。大きなしっかりした岩になり、第二高点に到着。鉄の剣が刺してある。前方の大きなピークはこれから目指す第一高点、後方は甲斐駒が大きい。鉄剣の前の岩に座ってしばし眺望を楽しむ。

この先、大ギャップを越えるが、旧ルートの踏み跡に惑わされ、少し時間をロスした。やがて上部に「鹿の窓」と鎖が下がっているのが見えた。そのまま鎖まで直登出来そうだが、落石があったときは避けようがない。一旦大きく左に向う踏み跡に入って、次いで右にトラバースすると、鹿の窓の下、しっかりした真新しい鎖の前に出た。ここは鎖を使わないでよじ登る。登っていくに従って左右の岩が接近してくる。両足のスタンスをそれぞれ左右の岩に求めて行く。左側の岩はしっかりしているが、右側の岩がもろく、最期は左の岩を登る。

鋸岳のギザギザは、このようにくずれやすい地層の個所が、ドンドンくずれるためであろうと納得する。この先でまたまた、鎖場に出た。これをクリアすると間もなく、第一高点2,685mの鋸岳山頂であった。ここにも鉄剣が刺してあった。名古屋のご夫婦の他に、逆方向から登って来た数名の登山者が休憩していた。皆さんご満悦である。甲斐駒よりたどってきた稜線を見て、よく歩いたと満足する。しかし、雲が怪しくなり雨の気配。少し休んだだけで下山にかかる。角兵衛沢の頭よりガレた角兵衛沢を下る。途中雨が降り出し、雨具を着るが直ぐにやんだ。やがて、水場の表示を見て、左岸の大岩下の水場に到着。ここでコンロを出して昼食とする。名古屋のご夫婦も水場にやってきたが、先に出発した。我々はゆっくり休んで、水筒に水割り用の水を満たして出発。ルートはこれより右岸の樹林帯の中になる。またまた雨となるが小降りで助かる。時々茸が目に付くが、これを無視してドンドン下る。やがて戸台川に出た。対岸には先行のご夫婦が靴をはこうとしていた。水量はあまり多くはない。水が入るのを覚悟の上で、靴を履いたまま渡渉すると、何と靴下は濡れなかった。ラッキー!! 

<コースとタイム>
9月30日:戸台大橋(8:15)=バス=北沢峠(9:05)北沢峠(9:20)―双児山(11:20)―駒津峰(12:10-40)―甲斐駒ヶ岳(14:10-20)―六合目石室(15:30/テント泊)
10月1日:六合目石室(7:00)―中ノ川乗越(8:40)―第二高点(9:15-25)―鹿の穴(10:10-20)―第一高点鋸岳山頂(10:40-11:00)―角兵衛沢の頭(11:15)―大岩下の岩小屋(12:30-13:10/昼食)―角兵衛沢と戸台川の出合・渡渉(14:35)―戸台河原駐車場(16:10?*)
*最期の2Km?ほどは車に便乗しましたので、正確ではありません。コースタイムは渡渉点より2:10です。

 


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