◆ 二子山・中央稜と赤岩尾根の登攀〜ガイド山行〜   佐藤 征男

双子山中央稜登攀(10月28日 曇)

       タイム:股峠付近駐車場10:00中央稜取り付き10:50登攀終了13:45 駐車場14:40 
 登山ガイドのT氏と西武秩父駅で午前8時50分に待ち合わせして、T氏の車で国道299号線を走る。夏に森林インストラクターの全国研修会で来た道である。坂本で分かれて西秩父林道(坂本・上吉田線)を走り股峠付近の林道脇に駐車した。すでに登山者らしい車が数台駐車していた。

 今日はガイドと2人パーティである。駐車場から先行するパーティの後を追うように約20分登って来た。右手の上部がハングした壁にクライマーが取り付いている。壁の下を通り過ぎると間もなくテラス状のところに着いた。ここが中央稜の取り付きであった。1パーティが取り付いており、遠藤ガイドのパーティも取り付きで待機しているようだった。急いで壁に向かってヘルメットをかぶり登攀の準備にかかった。直ぐ前を登ってきた3人パーティより先に取り付くために準備を急いだ。どうにか遠藤パーティの次に取り付くことができた。今日は久しぶりに赤と青のダブルロープで登ることになった。取り付きから大きなガバを使ってフレークを登り、途中から立木の左手を周り上部で右側にでると大きなテラスとなっていた。2ピッチ目は先行者が抜けるのを待って、カンテ状のところを登ると2人がやっと立てるぐらいの小さなテラスでビレーしていた。この次が核心部であるという。先行パーティは遠藤がガイドが最後部にいて下からトップの行動を指示している。「それでは2mぐらい落ちるぞ。」大きな声で後部から指示が飛ぶ。遠藤ガイドとはこれで一昨年の中山尾根、昨年の北岳バットレスに次いで登攀中3回お会いしたことになる。3回とも私たちより先行していた。上部から小さなデジカメで私たちを写してくれる。

 ガイドのT氏がロープが操作し易いように、もっと上体を後ろにそらせろというが、背後は遠くの植栽地が見えるなど高度感があり、セルフビレーを一杯に伸ばすには勇気がいる。第3ピッチはホールドも少なく、コーナークラックでホールドが小さく、支点もとぼしかったのでナッツを2個連続して設置してくれた。ホールドが小さく、スタンスも立てる状態ではなかったが、左手に長さ20cmぐらいのスリングが下がっていたので、これを左手で利用してどうにか上体を安定させることができたが、今度はナッツが外れなくて困った。ハーハーと息使いも荒くなり、一息いれてから再挑戦したら今度は外れてくれた。やっとの思いで大きなテラスに着いた。これで核心部が過ぎたとばかりに安心。今度は雲行きが怪しくなってきた。急にガスが沸いてきたのである。アンパンをかじりながらペットボトルの水を飲みガイドのT氏のビレー体勢に入った。第4ピッチは少しかぶりぎみの岩がでてきたが、距離も短いのでもう大丈夫。左手下方にローソク岩が良く見えるという。2人ぐらいが登っている様子が良く見える。私の背景はスギやカラマツの森が下方に展開している。遠くに大きな伐採地が見える。こんな山奥でも森林作業が行われているのだなと思う。職業柄ついつい、そちらのほうに目が移ってしまう。高度感は噂どおりすばらしい。少しゆとりのあるテラスでビレーして5ピッチ目もかぶりぎみの岩がでてきたが、ガバが十分とれる。石灰岩も硬く安定しているので確実に高度を稼いだ。

 後続パーティは核心部の3ピッチ目で離れた様子で後からの登攀者の姿は見えなかった。左手から数人のパーティが進路を横切ってきた。ロープをつなごうかなどと話している。随分長くロープを伸ばしているのだろうか。ガイドのT氏は山岳会の人たちのようだが、渓流シューズで登っている人もおり、やさしいルートを選んで登ってきたようだと言う。彼らはさらに右手に移って行った。6ピッチ目はもう易しいルートとなっていた。傾斜もゆるくなった岩稜を登り登攀終了点に着く。ここからさらに1ピッチをコンテニュアスで登りロープを解いた。稜線の両側はスッポリと切れ落ちている。木の標柱が立つ西岳頂上へはすぐだった。頂上からはガスの切れ間に中央稜の登攀者が良く見えた。随分急な稜に見えた。傾斜は80度位あっただろうか。ガイドからテラスの位置などを説明していただいた。ガスがなければすばらしい写真が撮れるだろうと思うがザックの中から好きなコンパクトカメラを取り出さなかった。雨が降り出さないうちに下ろうと急いで駐車場に向かった。西秩父林道から国道299号線に入り今夜の宿は山あいのやど民宿「やしき」小鹿野町三川には早めに着いた。

  広い屋敷と建築後110年という歴史のある民家と奥ゆかしい奥さんと、薄暗い裏庭に座り込んで草取りをしていた84歳の元気なおばあさんたちが住む上品な民家。温泉宿で料理は大変に品数が多く、こんにゃく、おそば、イノブタ、鮎、クリご飯など心のこもった夕食には驚いた。ガイドのT氏も料理をカメラでパチリパチリと写している。こちらは写真になる題材はないかとあたりをキョロキョロ珍しそうに見回していた。

赤岩岳・赤岩尾根(10月29日 晴時々曇)

     タイム:小倉沢の駐車場9:35 赤岩峠10:43〜55 核心部12;40通過 最低コル13:30〜13:40 P2 13:58通過 八丁峠15:05〜     15:15小倉沢駐車場16:16〜16:25 。
 ガイドのT氏から案内のあった赤岩尾根はプチバリエーショウンということで、二子山中央稜に登りにゆくついでに、せっかく近くまで行くのだからと登ることにした。秩父鉄道三峰口駅で40〜50才代の男子2名と合流して今日は4人パーティとなった。中津川支流の神流川の小倉沢地区は集落が消滅しそうな廃屋を待つ集落に感じた。石灰石の採掘をしていた日窒鉱山が廃坑になったように感じられたからである。昭文社の地図の公民館の表示のある付近の広場に駐車して、廃屋の間から赤岩峠を目指した。古びた登山道の入り口には入山注意の標識が朽ち果てて立っていた。

 植林地帯から木の葉が色づいた広葉樹の森、落ち葉を踏みしめながら登り、息をはずませるようにして、赤岩峠に着いた。ここは十字路であるが、ここから先はどこに行くのも昭文社の「西上州」の地図では破線表示となっていた。この峠でハーネスを着けてアンザイレして赤岩岳に向かった。わずかに獣道のような踏跡がついた雑木林の急登であるが左側にトラバースするように巻きぎみに取り付いた。左側も急斜面であるが右側はスッパリと切れ落ちている。立木や木の根につかまりながら赤岩岳に着いたが樹林の中で展望はほとんどできなかった。ところどころに小さなビニールテープでルートが表示されているが、雑木林をぬけると岩峰が出てきたので左側から藪の中を登った。登ったり下ったり雑木林やシラビソの林の中を歩いたり、固定ロープのある小さな岩場を下った。赤岩峠から約2時間で核心部といわれる3級ぐらいの岩場を約15m登る。小さなテープや国有林で標識に使ったのだろうか赤ペンキの表示も混じる。雑木林の岩稜を進みP4、P3は気が付かないうちに通過してしまった。開けたピークにP2と書かれた板切れが木に打ち込まれていた。P3付近だったろうか右手の枝尾根に入り込んでしまい急斜面で下れないので、少し戻ったりしたが、やがて踏み跡もしっかりしてきた。旧八丁峠の古い木の標柱のあるところでアンザイレンを解除。少し登りまた下るようになると八丁峠の新しい標識が立っていた。何本も標識があり、私たちが歩いてきたP1方面には「立ち入り禁止」の大きな標柱が立っていた。落ち葉で踏み跡がはっきりしない急な歩道を下り30分ぐらいで舗装された林道金山志賀坂線に出た。小倉沢の集落まで、時々車に追い抜かれたりすれ違ったりしながら紅葉の林道を歩いた。小倉沢の集落は、かつて石灰石の採掘が行われていた頃には賑わった様子。ガラス戸がガラガラと開いてしまったり、カーテンが閉まっていたり、少し前まで人のいたような気配もあった。残された共同浴場や古びた半鐘、公民館、学校らしい建物からも知ることができるが、今は無人となりゴーストタウンの様子で気味が悪かった。

 


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