■戸隠西岳心象(戸隠三山完遂記)  宮崎陽正

◎H18.10.28〜29 (参加者:(L)藤野孝人、斉藤光子、宮崎)
◎鏡池の下の林道駐車場(5:50)−採草地(6:50)−熊の遊び場(8:45−55)−無念の峰−P1(10:25)−西岳(11:00−10)
  −本院岳(  11:55−12:10)−八方睨(14:20−30)―百間長屋(15:45−50)―戸隠奥社(16:30−45)―鏡池(17:25)

 .生来の筆不精、登山用語の語彙不足に加え、現場ではよそ見もせずただはぁはぁ言って歩いているだけなので、ついつい肝心 の山行日誌が遅れてしまいました。仕方がないので正確さは二の次にともかく以前に単独行した戸隠山、高妻山を加えて勝手に戸隠三山と命名し、かいつまんで心象を書き付けてみることにしました。
  数年前テレビのニュースで紅葉の戸隠山が美しく報じられていましたので、長野新幹線の1番列車と地元のバスを接続して早速日帰りで行ってみました。バスには登山客らしき人がかなり乗っていましたがほとんど手前の飯綱山登山口で降りてしまい、大丈夫だろうかと心配しながら奥社裏からいよいよ岩稜をよじ登っていきます。頂上直前の蟻ノ搭渡りと剣ノ刃渡りは幅数十センチで年によって一部崩壊していたりするので事前のチェックが必要です。実質上の頂上といえる八方睨は文字通り眺めがよく紅葉もほぼ映像と同じでした。ここからの高妻山はきれいなピラミダルで実際登ってみてもこのポイントからが結局1番良いのではと思います。 ところで暫く休んでいると今登ってきた道とも、右前方の高妻山への道とも違う、もう一つ別の西側の道から力強い表情の若者が一人やって来て腰を下ろしました。明らかに私たちとは違っている感じなので何かあるなと思いながらのんびりと戸隠牧場へ下山しました。調べてみるとそれがガイドブックの目次には載っていない戸隠西岳でした。
  翌年の秋往復バス+現地バス乗り放題の戸隠フリー切符を発見、10時間はかかる西岳を狙ってテント持参で戸隠キャンプ場に1泊千円で幕営しました。まずはフリー切符の特典を使い割引対象の戸隠蕎麦屋へ立ち寄ったあと明日の下見にと登山口のある鏡池まで歩きました。池はとても美しくここだけ別個の世界を形造っていてまるで時間が止まっているようでした。眼前の屹立する西岳岩峰群としばし対面しながら登山口を捜しましたがここかぁ〜思うくらいやっと見つけられるほどの道が付いているだけでさすがに単独行では寂しいなと思案しながらテント場に戻りました。
 高妻山で我慢するか西岳完遂にするかは、朝6時を過ぎてもテントを打ちつける小雨の音が決めてくれました。とはいえピストンでも8時間位はかかる高妻山、疲れないようにして一合目ずつ消化していくのですが上に行くほど飽きてしまい、頂上に着いた瞬間迷わずこの先の乙妻山までもう1足を伸ばすのをカットすることにしました。
 そんな中での今回のシリウス山行。再び鏡池の前に立ち湖畔にテントを設営し多くの写真家に混ざりゆっくりと移り行く湖面の変幻に3人で時間を費やしているとふっと明日登るのは止めてこのままのんびりしていようかなんていう気持ちがよぎります。山に登るのは我々だけでしょうか、日が沈むと写真家たちは一人残らず去っていき、急に冷えてきてあたりは真っ暗になってしまいました。早朝いよいよ登山開始、以前見た登山口は別物のようによく整備されていて西岳導入部の暗い印象はきれいに払拭されていて気分爽快。沢筋を暫く過ぎると今度は天然のゴルフ場のような大きな草地が突然現れ、はしゃいでカメラのシャッターを何枚もきってしまいます。ここから本格的な急登が続き岩盤が立ちはだかるといよいよ西岳岩峰群の始まりです。長丁場ですがゆっくりと落ち着いて歩いていけばよいと思いました。
  2点、最初の下りの岩ではしごを掴むのに思ったより足を伸ばさないといけないこと、途中ルートファインディングに注意するところが2箇所あったように記憶します。無念の峰、P1、西岳、本院岳とアップダウンを繰り返し八方睨への登り返しの鞍部を待ち遠しく長い下りを終えるとホット一息です。ポッカリと小さく見える昨日の鏡池を今度は歩いてきた山々が逆に扇のように囲んでいる様がなるほどよく判り、自分たちの足でたどり着いたことを改めて実感し疲れを吹き飛ばします。八方睨に到着すると以前見た青年と今ここに立っている自分とを重ね合わせて喜びを増幅させてしまいました。下山路は戸隠山の刃渡り・戸渡りを念のためロープで確保して慎重に通過し、疲れも出てくる頃鎖場を一気に下降し奥社に出ます。自然と社殿に歩み寄り感謝の気持ちを込めて参拝を済ませてから杓子で水をがぶ飲みしました。
 帰途閉店間際の戸隠蕎麦屋で長い丸一日を噛み締めながらそばを一杯詰め込み、これでやっと戸隠三山完遂記の出来上がりと
なりました。皆様にお礼申し上げます。

 


個人山行報告目次へ     HOMEへ