◆6月の小同心クラック登攀 藤野孝人

◎登攀日:2007年6月13日  ◎ メンバー:L.藤野、斎藤

  
              (後方は赤岳)                  (小同心の頭付近に咲いていた「つくもぐさ」)

 「6月の小同心付近は花がきれいそうよ」とは斎藤さんのかねてよりの話。「行きませんか?」との意味がこもっていたが、
無積雪期の岩はもろいのではないか? と、その気にならなかった。ところが、確かな筋より「小同心の岩は、まあ大丈夫」
と聞いて、2人で出かけた。初日は赤岳鉱泉泊まりとして、15時からの一番風呂に浸かってリラックス。大部屋も数人しか
おらず、平日は誠に快適。

 2日目、早朝に小屋を出発。急な大同心稜を詰めていく、約1時間で大同心の基部付近に到着。ここでハーネスを装着。
これより小同心に向かってトラバースしていく。融雪の影響でルートが崩れた箇所があり、高巻きして懸垂下降をしたため、
意外と時間を要して取り付きに到着。先ずはハーケンを探す。「確かこの辺りにあったハズ、・・・。」「あった!!」直ぐにビナを
掛け、テープシュリンゲをセットする。これから登攀するルートを見上げながら行動食を口にする。ガチャを付けロープを結ん
で、いよいよだ。

 1ピッチ目(40mW−):掴みやすい岩、足を置きやすい岩がいっぱいであるが、岩が動かないか、注意しながらゆっくり行く。
フェイスからチムニーとなった。アイゼンと手袋で登ったとき、緊張した箇所であるが、簡単に登って、ビレー点のテラスに到
着。ここでビレーする。斎藤さんもルンルンと登ってきた。
 2ピッチ目(35mW−):ビレー点の横の岩を右に回りこんで、チムニーに入って登っていく。ハーケンがなかなか出てこない。
冬季のトップは緊張するだろうと思いながら行く。一箇所ピナクルにシュリンゲを掛けて中間支点をとった。チムニーを抜ける
と小テラスとなり、見覚えのあるビレー点に到着した。
 3ピッチ目(20mV):出だしのチム二―が狭く、前回は、正対すると身体が入らず、横になるとザックが支え、もがいた箇所
である。薄着ではどうか? 改めて正対で試してみると、両肩が支えてしまう。さっさと諦めて、ここはチムニーに入らず、左か
ら巻くように登ってみたところ楽であった。快調にテラスに到着。斎藤さんも余裕で登ってきた。ここのテラスは広く、横に「つ
くもぐさ」の群落があった。すぐ上が小同心の頭である。
 4ピッチ目(10mU?):右は凹角、左はトラバースルート。右の凹角を登った。10mほどで小同心の頭に出た。足元は「つくも
ぐさ」が咲き乱れていて思わず歓声が出る。赤岳〜横岳の稜線、そこを縦走している登山者の姿が近い。花々を愛でながら
大休憩とし、至福のひとときを過ごした。
行動食を食べてから腰を上げ、横岳の基部に向かう。足元には「つくもぐさ」が咲き乱れている。基部より横岳山頂まで、4月
は1ピッチで登ったと思うが、ガイドブックでは、20mU、30mV+の2ピッチである。観察の結果、「ここから」と見当をつけて
登りだす。最初のピッチは易しいがビレー点が見つからず、岩に長いシュリンゲを回してビレー点とした。2ピッチ目、少し登る
とハーケンが出てきた。どんどん行くと横岳の標柱が見え、ついに横岳の山頂に出た。
 標柱を押してみると簡単に動く、積雪期はしっかりしていたが、これではビレー点に使えない。岩にシュリンゲを回してビレ
ー点とした。一般登山道は平日でも行きかう登山者がいる。ギャラリー注視の中、斎藤さんが到着。山頂で一息入れている
と、昨日、鉱泉で斎藤さんと歓談していた単独の女性登山者もやってきた。「アレッ! ヤァ! マァ!」と歓声が飛ぶ。しばし談笑。
 無積雪期の小同心クラックはあまり緊張感が得られないが、傾斜がある割にグイグイ登れるので、それなりの面白さはあ
る。終了点が山頂というのも良いものだ。また、ほとんど人目に触れることのない花々を愛でることがでるので、花が好きな
方にはお勧めのコースである。

<コースとタイム>
19日:美濃戸(12:20)―赤岳鉱泉(14:00/宿泊)
20日:赤岳鉱泉(5:20)―大同心基部付近(6:20-30/ハーネスを着ける)―小同心クラック取り付き(7:50?−8:10)―
    小同心クラック登攀―小同心の頭(9:30―10:00?/大休憩)―横岳(10:50-11:30)―硫黄岳(12:10)―赤岩の頭
    ―赤岳鉱泉(13:20-14:00)―美濃戸(15:30)

 


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