◆一ノ瀬川・大常木谷遡行 玄 陽成(ゲスト)

 
◎07.6.16(土)〜6.17(日)
◎一ノ瀬林道〜大常木谷出合〜会所小屋跡(泊)〜終了点(奥秩父縦走路)〜将監小屋〜一ノ瀬
◎メンバー 西山、赤澤、川崎。柴村、玄(ゲスト)

 幾分水量が少ないと感じる程度の奥多摩湖を西へ西へ…。私は〈お祭り〉より先の丹波方面は初めてであったため、
非常にわくわくしていました。しかも天候は気持ちの良い晴天で暑いくらいです。途中のおいらん淵で手を合わせて
いよいよ一ノ瀬林道へ…。
 一ノ瀬林道脇に車を置き、すぐにハーネス、ギア類を装着し、いきなりの急降下に備えます(滑落による死亡事故が
起きている事を示す警告板あり)。とにかく慎重に下り、かなり高度を下げたあたりで沢が現れます(10:30頃)。非常に
滑りやすい茶色い大きめの石に足をとられながら少し下流へ…、なかなか広い大常木谷出合に出ます。ここから上流
へ、しばらくは緩やかな流れを右岸から左岸へ、左岸から右岸へと渡り歩きます。

 両岸がかなり迫る見ごたえのあるゴルジュに入ると、ほどなくして滝が連続して現れます。最初の滝から胸まで浸か
ってしまいそうな深みからの直上です。水は思っていたより冷たく震える思いです。特にロープを出さなくても登れるの
でちょっとした水浴び気分です。ただ沢の深くなっているところ等は、落ちてもずぶ濡れになるだけ
ですが、水温が低いので気を付けながら岩をトラバースします。

 五間ノ滝(8m)は水量が豊富です。先に西山さんが登り、その後各々がロープを繋ぎ水流の脇を直登します。手がかり
が多く意外にすんなり登れますが、滑りやすいぬめった部分は要注意です。その後もナメ状の小滝がいくつか続きます
が、滑りやすいところを避けて注意しながら登ればそれほど危険ではありません。時間に余裕もあり休憩がてら釣りをす
ることに…、なにが釣れるのでしょうか? 何度かしかけ直して釣り糸を垂らしてみましたが結果は……。

 きりのいいところで出発してしばらく行くと、上流からやや冷たい風が吹き抜けていきます。いよいよお出ましか…。左
に大きく曲がった所に出現したのが25mの千苦ノ滝です(12:50)。これはさすがに直登は厳しそうなので高巻きします。
しかし水量もかなり豊富で豪快な滝で、見ごたえ十分です。むしろ危険な急傾斜の高巻きコースはトラバース箇所が崩
壊しているようでした。少し高めに登り懸垂下降でもとのコースに戻りました。

 沢に戻りまた鬱蒼としたゴルジュを行きます。ここからは足が底に届かない深い淵の連続です。山女魚淵からはとうと
う泳ぐことになりそうです。意を決して泳ぎ始めると…、ザックが浮いたのとは逆に、体はギア類や服などの重みも重なっ
てズンと沈んでしまいました。つっ、冷たい! それでも必死に泳いでなんとか太い丸太にしがみつき、左岸に見える
フィックスロープをつかんで淵からあがりました。さっ、寒い!

 続く早川淵を、西山さんはバランス良く丸太の上を渡っていきます。私はあえて途中まで泳いでみることにしました。
もう水の冷たさには慣れたので難無く丸太の中間のあたりまで泳ぎ、そこから両手を丸太に、両足を右岸の岩につけて
ズルズル移動しながら進みました。この辺は大常木谷の核心部分で非常に楽しめます。ただ天気が良 くないと寒そう
ですね。ちなみに淵から少し登ったあたりでほとんど骨だけになった、沢に浸かったままの鹿の死骸を発見しました。

 いくつか滝を越えるとモミジ窪が左岸より滝をかけて合流してきます。水量はそれほどでもありませんが、10mと高さ
もありなかなかの景観です。やがて二段構えの奥に不動ノ滝(8m)が見えてきます。ここは直登せずにすぐそばの高巻
き道から登ります。ここからはナメ滝がいくつかありますが、滑りやすい石が多く、油断するとすってんころりんしてしまい
そうです。御岳沢出合を過ぎたあたりから沢を横目に右岸を、ひたすら歩きます。意外と高度を稼いだあたりで広い台地
が現れます。今夜の寝床、会所小屋跡に到着です(16:00頃)。

 さっそく沢でビールを冷やし、木やでかい石にロープをつなぎタープをスリングで縛り、その下にツェルトを張って寝床
完成です。次は焚き火に使う枯れ木や枯れ枝を集めますが、倒木等が大く材料には事欠きません。さて一通り夜食の
準備が整い、沢で冷やしていたビールを取り出します。短時間水につけていただけでも十分冷えてい
ています。乾杯! うっ、うまい!! 自然林に囲まれた暗闇の中で、焚き火の灯りで酒を飲んでうまいものが食べられる
とは、非常に幸せなことだと思いました。日が沈むととたんに冷えてきましたが、焚き火のそばにいると暖かいので妙
に安心感があります。

 翌朝6時起床、8時出発の予定なのに、5時前から皆さん起き出して朝食の準備を始めています。感服します。しっか
り朝食を食べて後かたづけをして、まだ乾ききってなく冷たい沢靴を履いていざ出発…、予定より1時間以上も早いです
が、遅くなるより良いに決まっています。昨日に引き続き沢の中に足をジャボジャボ突っ込みます。早朝の沢は想像以
上に冷たく、とても泳ぐ気にはなれません。しかしこれからは特にそういった淵等は無いようで、足をとられてすっころば
ないかぎりあまり濡れることはなさそうです。

 いくつか小滝を水流にそって登っていきます。昨日とは違い淡泊な沢歩きといった感じです。しかしタエモン沢から滝
をかけて落ちてくるように、所々でそのような光景があり目を癒してくれます。昨日のゴルジュ主体の沢と異なり、少し
開けたゴーロ歩きという印象です。ゴツゴツした岩や倒木等をまたいだりくぐったり、バランスをとって岩にしがみついて
いたり、いつも思いますが沢登りは岩綾登攀等の鍛練でもありますね。

 そうこうするうちに巨大な岩がてっぺんに乗っかっているのが印象的な15mの滝が現れます。手がかりは多そうでな
んとか直登できそうではありますが、全体的にシャワークライミングになり、特に落ち口手前からもろに顔面に全水流を
浴びながらの登りになるので、今の時期の朝は寒すぎてちょっと気が引けます。向かって右手にいかにも登ってくださ
いと言いたげな階段状になっている岩場があるので、そこからヒョウイヒョイトあがりました。次回はもっと暑い時期に来
て滝を直登したいですね。

 ナメ状の滝等が度々現れて眺め的にも癒してくれますが、沢の合流地点に出くわす時はその都度進む方向を確認し
なければなりません。最後の小さな出合を左に分けると、だんだん小滝等も減ってきて傾斜も増してきます。沢の水も
そうとう減っていよいよ終了点は近い…、と思いきや、ここからが核心なのかと疑うほどの長いガレ場の登りの始まり
です。傾斜もかなり急で、踏んだ先からゴロゴロと落石が起きるような浮き石だらけのきついガレ場です。これが何10
分も続くのでいい加減いやになってきます。

 やっとの思いで登りきった所(終了点 9:15頃)は奥秩父縦走路で、右に行けば飛竜山方面に向かいます。ふり返る
と富士山から南アルプスの山並みが残らず見わたせます。これは素晴らしい眺めです。がんばって登ったご褒美です
ね。我々は景色を眺めながらロープやハーネス、沢靴やギア類をザックにしまいこんで下山の準備にかかります。荷
物はまた重くなりましたが、これから先は一般登山道なので特に危険な所はありません。準備が整い将監小屋方面
へ、これまた長い長い道のりです。

 それにしても一般登山道は歩きやすいですね。多少のアップダウンはあるものの順調に進むことができます。山腹
の巻き道をひたすら、ほとんど惰性で歩き続けること1時間半ほどで将監峠への道を右へ分けて、将監小屋の青い屋
根が見えてきます。小屋の休憩所におじゃまして、水を補給したり涼んだりして再び出発です。これからは林道(作業
道?)をひたすら一ノ瀬方面へ…、40分ほどであらかじめ自転車を預かっていただいていた民宿「しゃくなげ荘」に到着
です。柴村さんに自転車で、前の日に林道脇にとめた車を取りに行っていただき、それに乗って帰路につきました。

 途中の食堂に寄りビールで乾杯をして遅めの昼食をとりました。皆さんはお疲れの様子でしたが、ビールを飲んだら
生き返ったようにも見えました。ビールというのは良くできた飲み物ですね。お疲れ様でした。

 今回の沢登りは息の長い遡行でした。反省点をあげるとすると、シュラフを持っていかずシュラフカバーだけで夜を乗
り切ろうとしたものの、予想より寒く十分に睡眠がとれなかった点です。しかし遡行そのものは、特に難しい滝があるわ
けではなく、寒くなければ泳ぎも楽しめて、しかも焚き火で暖をとることができるという、いくつもの遊びの要素がある、
初心者でも十分楽しめるものでした。今回の沢登りでまた新たに山の魅力を知ることができました。

 企画してくださった西山さんをはじめ参加者の皆様、いろいろご指導等していただき感謝しております。次回山行等も
また宜しくお願い致します。ありがとうございました。

 


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