◆二子山・西岳中央稜 登攀   藤野孝人

                 
◎2007年6月20日登攀
◎メンバー:L.赤澤氏、大塚氏、藤野

             

 本来は、谷川岳一の倉沢衝立岩中央稜の予定であった。しかし、天気予報で谷川岳は雷雨が予想されたため
これを延期し、二子山西岳中央稜をやることにした。私自身は、今年は先月に続いて二度目の登攀である。
前夜、大塚氏と二人で299号線の道の駅・芦ヶ久保でテント泊。定番のおでんとアルコールで山の話しはつきないが、
適当に切り上げて休む。深夜、駐車場を走り回るバイクの騒音に悩まされ寝不足となったが4時に起床した。
赤澤氏は予定より早く6時前に到着。これより車は一台にして、二子山へと向かった。股峠裏の駐車スペースには
先着車はなく、早速ハーネスを着けて取り付きに向かう。「祠エリア」のハングはいつ見上げてもこんなところどうや
って登る? と思わずにいられない。
  急な踏み跡を登って中央稜の取り付きに到着。一番乗りだ。ガチャを付け、懸垂下降でここに降りてくることにして
靴などをデボ。

 1ピッチ目(W40m)は、私がリードさせていただく。9.5mmと8.6mmの50m二本を引いていく。準備体操もやらず、ウォー
ミングアップもしない本チャンルートは、1ピッチ目はV程度にしてもらいたいところだが、現実のルートはそうもいかない。
ちょっと登ったところで、あるはずの最初のハーケンが見つからない。確かこのあたりにあったはずと、きょろきょろ探す。
下から赤澤氏より「足元にあるよ」との声。ありがとう! そのすぐ上は、短いが適当なスタンスがない箇所だ。ここはフリ
クションを効かせて登る。このピッチの核心は、上部のピナクルを右に越えるところだ。ピナクルの上部にハーケンがある。
左手でピナクルの上のホールドを掴んで、身体を岩の外に出し、右手でハーケンの小さな穴に5mmのシュリンゲを通そうと
するが、ぎりぎりでなかなか入らない。腕が疲れてきたので一旦少し下りて一息入れる。ここは5mmが入ったハズ。
再度挑戦したところやっと通すことができた。このシュリンゲにヌンチャクを掛け、これを掴んで思わず「フウーッ!」。
ロープをクリップして、これを越えると後は楽。間もなくビレーポイントに到着。セカンドは大塚氏。なんだかんだと言いながら
登ってきた。サードは赤澤氏。黙って登ってきた。

 2ピッチ目(X−30m) 大塚氏がリードする。しかし、ハーケン2本目で行き詰ってしまった。「手がない」とのこと。下からガイド
パーティが追い上げてくる気配。ぐずくずできないので、一旦降りていただく。代わって赤澤氏がリードする。手がないとの
箇所もクリア。セカンドは大塚氏。今度は何とかクリア。後ろで到着したガイドさんがうるさい。ゲストが「登れません!
降ります! 降ろしてください!」と言うので、上から大声で叱咤激励している。三番手は私。「OK!」の声を聞いて登りだす。
手がないとは「ガバがない」との意味であった。3名がぎりぎりの狭いテラスに到着。

 次の3ピッチ目(X30m)が中央稜の核心の凹角である。事前の打ち合わせ通り、赤澤氏がリードする。一本のロープは
大塚氏が、他方のロープは私がそれぞれ確保。赤澤氏は定石とおり、右端のクラック沿いに登っていく。上部の核心部も
シュリンゲやヌンチャクを掛け、カムも使ってクリアした。これを越えれば直ぐに大テラスだ。「ビレー解除!」、次いで「OK!」の
声を聞き、次は大塚氏が登っていく。苦戦しながらクリアした。三番手は私。部分的にレイバック的にしたり、クラックに足を
入れたり、右の壁を使ったり、ヌンチャクを掴んだりしてクリア。ここをリードするのはたいしたものだ。さすが赤澤さん。
 大テラスで行動食を食べ、水を飲んでしばし休憩。後続のガイドパーティは一度降りてしまったようだ。登ってくる気配がない。

 4ピッチ目(W30m)は、リードさせていただく。大岩を乗り越えるところがポイントだが易しい。これを越えると緩斜面で直ぐに
ビレーポイントに到着した。

 5ピッチ目(W30m)は赤澤氏がリード。事前に「クラックより凹角を登る」とルートを確認した通り、順調に登っていく。二番手
は大塚氏。途中で疲れて「ちょっと休ませてよ」などといいながら登っていく。最後に私。少し変化があって面白いピッチだ。
後続の新たな二人組がすぐ下に見えた。先ほどは大テラスにいたのだが、かなりのスピードである。

 最後の6ピッチ目(V+40m)は大塚氏がリード。順調にスラブ―凹角―クラックと登っていく。姿が見えなくなるとビレー
ポイントだ。二番手の赤澤氏が登り出した直後、後続組のトップが、私のいるビレーポイントに到着した。後続組がビレー
しやすいようにスペースを空ける。後続組より「後2組登ってくる。後の組は1ピッチ目でトップロープにして練習していた。
こんなところでトップロープをやるなんて、・・・。」と聞く。例の「ガイド組」だ。私が「OK!」の声を聞き、登りはじめると後続
組のトップが同時登攀のように登りだした。易しいピッチなのであせらないが、難しいピッチなら嫌な感じだろう。後続組は
二人でつるべ方式であるから、システム的にも早い。

 終了点から懸垂下降の予定であったが、後二組登ってくるとのこで、すぐに懸垂下降できないため、ひとまずロープを担
いで山頂へ足を伸ばし、西岳山頂で両神山を見ながら昼食とした。昼食後、山頂付近より懸垂下降をしょうと準備するが、
どうもロープが樹にひっかかるような気がしてならない。相談の結果ここはパスして、登ってきた中央稜に戻ってしばらく
待機する。
 最後の登攀組はやはり1ピッチ目で一度降りたガイド組であった。ガイドに散々叱咤されてもめげずに登って来た根性は
たいしたものだ。やはり女性は強い。ガイド組を見送って、ノンザイルで最終ピッチの終了点に慎重に降りた。 
懸垂下降のロープをセットしようとして気づいた。先月、懸垂下降で降りたとき、付け足した私の6mmのシュリンゲが残っ
ていた。紫外線の影響で少し色があせていたが、まだまだしっかりしていた。シュリンゲの位置を少しずらして、50mロープ
を回して、大塚氏が二本をエイトノットでしっかり連結。藤野、赤澤氏、大塚氏の順で懸垂下降した。さて、ロープを回収しよ
うとして、引っ張ったところ少し動いただけで、動かなくなってしまった。いろいろやってみたが動かない。大塚氏が「じゃー、
登ってくるわ」と気軽に登り返してくれた。さすが大塚さん!いいところがある。ロープの位置を変えて再び懸垂下降。尋ねると
「細いクラックに挟まっていた」とのこと。今度はどうか? 3人で力を入れて引くと、どんどんロープが降りてきて、最後はドサッ!
と落ちてきた。以降、懸垂下降を繰り返して、無事、取り付き点に降り立った。

 今回の登攀をやってみて、衝立岩に行かなくて良かったと思った。三人でロープを結び、トップが交代して登攀するのは、
ロープワークが複雑で時間がかかる。事前に練習や確認が必要と思った。また、セカンド、サードも5m程度の間隔で登攀
すれば、時間が短縮できる。今回の登攀でいろいろな課題を得たので、今後に活かしたいと思っている。
しかしながら、今回の中央稜は、三名がそれぞれの特徴を出し合った充実した登攀であった。

<タイム>
 中央稜取り付き点(7:30)―1,2,3ピッチ登攀―大テラス(9:30-9:50? /休憩)―4,5,6ピッチ登攀―6ピッチ目終了点(11:30)
 ―西岳山頂(11:50-12:20? /昼食)―6ピッチ目終了点(12:30)―懸垂下降―取り付き点着(15:15)

 


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