◆谷川連峰・魚野川、万太郎本谷(8月10日〜12日)
                  西山常芳、玄 陽成(東京山楽会)

 10日(金)夜、土合駅集合、仮眠
 11日 (土) 土合−土樽−イシクラ沢出会い付近にてビバーク
 12日 (日) 三の滝−肩の小屋−天神尾根−土合
  参加者=シリウス・西山、東京山楽会(3名)、ユーマック(1名)


 11日(土) 今回の遡行は距離6km近く、標高差1100mの長丁場だ。万太郎は初めてなのでその点も非常に
楽しみである。天候はすこぶる良く、朝から強力な日差しが照りつける。入渓地点のだだっ広い河原で装備を身
につけるだけで汗がしたたり落ちてくる。今日は暑くなりそうだ。本日の入渓者は二人パーテーが3組。我々が
一番の大所帯である。・・・(AM、8:00出発)。
 視界が開けているだけに沢の色が明るい。しばらくは透きとおったナメ、それからアイスクリームをスプーンで
すくったあとのようなトロ場や釜が続くが、それぞれがエメラルドグリーンにまぶしく光っていて、素晴らしい景観
を作り出している。このへんを遡行するだけでも来たかいがあったと思えるほど美しい景色だ。
 ふと気が付くと巨大な煙突のような関越トンネルの換気口が現れる。景観にそぐわないし、近くで見上げると
ばかでかい。こんな所に、よく作ったものだ。

 ゴルジュ状になりしばらく進むと、かの有名なオキドウキョウ沢に出合う。ここは泳がなくてはならない。Sさん
が先に泳いでロープを引いて行き、みんなはそのあとに続く。流れもさほど早くなく、思いのほか楽しく泳げた。
・・・(AM、10:00)。
 先行2人パーテーに追いつき、登攀を見ていると、だいぶ苦労している様子、我々に順番を譲ってくれた。我々
は、ハーケンを打ち、何とか登攀、クリヤー。翌日、土合駅にて、この2人パーテーと再会するが、おたく達は登
攀が上手いですねとほめられ、まんざらでもなく、つい、顔がほころぶ。沢は相変わらずエメラルドグリーンに輝
いて美しい。しばらくして一ノ滝が現れるが、落差が30m、この巻き道がひどいヤブこぎで面白い。(PM、12:45) 
二ノ滝は右よりなんなく登れる。イシクラ沢出合いを過ぎたあたりからビバーク適地を探す。2カ所ほど先客がテ
ントを張っている。我々も茂みのちょっとした空間にタープを張り、夜に備えた。・・・(PM、3:00)
 準備が整いビールで乾杯する…、なにしろこの瞬間がたまらない。沢音を聞きながら、酒をたしなむ…、これ
ほどの贅沢はなかなか無い。午後6時になっても空はまだ明るく、美しくも燃えるような真っ赤な夕日が眩しい。
やがて暗くなり焚き火を燃やし、我々は時間が経つのを忘れ談笑した。

 12日(日) 午前5時半、出発。二段40mの三ノ滝はすぐ現れる・・・(AM、6:10)。下段の滝の右側からトライ
してみる。一見難しそうだが、登り始めると案外手がかりが豊富だ。スラブ状の所から上段の滝をリードする。
高度感のある水流の登りは下から見上げると非常に見応えがある。滝の水流の中を、斜上するので、まともに
全身シャワークライミングとなる。水量が多ければ、非常に困難な登攀となることを覚悟せねばなるまい。なか
なか普段味わえないダイナミックな登攀だ。中段からは難しそうなのでそのまま支流を伝って対岸に渡り、落
ち口までヤブこぎする。
 ロープを引いて、三の滝、上部のトラバースを始めると、すぐに傾斜がきつくなり、木の枝につかまりながらで
ないと先に進めない。足下が切れ落ちた所を枝と枝の間に挟まったような状態で渡り歩く様は、まったくオラン
ウータンと一緒である。ロープでつながってはいるものの、滝壺までまっさかさまという場所もあり、思わず枝を
握る手に力が入る。・・・(7:10)

 だんだん水量が少なくなり、水筒を冷たい湧き水で満たしてほどなくすると、いよいよ最後の詰めに入る(9:30)。
ここからはほとんどヤブこぎは無いが、カンカン照りでかなり暑い。しかしゴツゴツした岩場の登りで傾斜もきつい
ので、瞬間、3級ぐらいのアクロバティックな登攀が楽しめる。たまに来た道をふり返ると、これまでの行程がほと
んど見える。万太郎山や茂倉岳等も見わたせ、まさに絶景だ。時折稜線を、登山者が歩いているのが見えるので、
終了点までの距離を測れる。やっと登りきりみんなで握手を交わした。・・・(11:00)。肩ノ小屋でビールで乾杯した
後、往復15分ほどのトマの耳(1963m)まで行ってみた。休日なこともあり登山者が大勢いて山頂の雰囲気を存分
に味わえた。値段は高いがかなり立派なロープウェイで土合の駐車場へ…、遡行の幕を閉じた。

  関東界隈に住む我々にとって、あこがれの谷川連峰であるが、いざ沢に踏み込んでみると、時に緩やかな流
れで身を包み、時に豪快なしぶきで冒険心をあおぎついでに,心身を再生し、癒してくれる、オアシスのようだっ
た。泳ぎが苦手だと敬遠しがちのむきもあるだろうが、信頼できるリーダーと行けば何の問題も無いので、是非
大自然に身を任せてみてはいかがだろうか。自信を持って推薦できるイチ押しの沢である。

 


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