◆中央アルプス・空木岳から越百山 スピード縦走(2007年8月) 

  矢澤 昭文

 9月2日に木曾の御嶽山で、「おんたけスカイレース」という山岳マラソン大会があり、それについエントリーしてしまった。
以前負傷した右膝の痛みがなくなれば出てみようと思っていたのだ。そして、出るからには完走したいという思いがある。
 近くの山の中の林道を上がったり下がったりして何とかいけるかなと、ならば本番を想定してのトレーニングをと思い浮
かんだのが、登山口から尾根まで標高差2,000m近くの登りが続く中央アルプスだった。「おんたけスカイレース」は、
麓から山頂往復のコースで標高差が2,000m余りである。そこで南駒ケ岳、空木岳を結ぶコースが日帰りにはちょうど
いいかなと決めた。山も綺麗だとも思った。

 木曾川の伊奈川ダムダムの上流の駐車場に車を止め、どこから見てもトレイルランニングの格好で6時15分に出発した。
先ずは空木岳に直接登ろうと思い、その林道に入って行った。緩やかに上がっている林道を、遅いペースではあったが
ランニングスタイルで足を進めた。山道に入り歩くことを余儀なくされた。しかし思いの外調子が良かったのか、八合目で
地図を見たらコースタイム6時間のところを2時間30分で来ていた。この調子なら越百山まで行けるかもという気持ちにな
った。
 稜線に建つ木曾殿山荘から急登が始まった。高度を上げるにつれシンドくなってきた。それまでの登りがオーバーペース
だったのか、それとも空気が薄いのが影響しているのか、空木岳の山頂では周囲の風景を眺めることもなく10分休んだ。
その間エネルギーの補給をと思い、おにぎりを1個食べた。南駒ケ岳に向けて,稜線を少しは走ってみようとしたが力が
残っていなかった。そのうちに両足に痙攣がきてますますペースが落ちた。
 南駒ケ岳の山頂でこのまま北沢尾根を下りようかと思ったが、時間的には余裕があり越百山に向かうことにした。上り
ではペースが上がらず、それでもコースタイムよりは速いのだと呟きながら歩を進めた。暑い夏が続き、立秋を迎えた
はずなのに山の上も暑かった。
 越百山に着きホッとしたが、一気の下りに右膝が負担を訴え始めた。やっと林道に出たが、その林道も長かった。何とか
駐車場に着いたがかなり疲れていた。暫くはグッタリしていた。今日はトレーニングの積りだったが、いつの間にか夢中に
なっていた。
 中央アルプスは3,000mに満たず、南・北アルプスに比べてマイナーな山域である。そのおかげかロープウェイが架かる
主峰駒ケ岳周辺を除けば、夏山でも割りと静けさを保っている。お盆の最中にもかかわらず、1日で出会った登山者は25人
程度だった。また稜線間近までハイマツ等が生え、白い花崗岩の山々とのコントラストが目に美しい。お花畑が足元に広が
り、疲れた心身を癒してくれた。また、越百山という山名の響きが心地よい。

 さて、21世紀になった2001年に日本山岳耐久レース(通称ハセツネ)があることを知り初参加した。登山に対して新たな
考え方が加わった。これほど身を軽くしての登山、ランニングシューズに毛の生えた程度の靴、そして山道を走ることの軽
快感。それ以降ハセツネには毎回参加している。今年は他のトレイルランニング大会にも幾度か参加した。しかし考えてみ
れば、元々登山の世界には「かもしか山行」というのがあったのだ。ただそれはレースではなく健脚の者が、あるいは健脚
に鍛えるために、1泊2日のコースを荷を軽くして1日で歩いてしまうというものだった。さらに言えば、その昔、また今でもあ
るのであろうが、修験者の山岳修行にも通じているような気がするのだが・・・。

〔記録〕6:15伊奈川ダム駐車場、9:50〜10:00空木岳、11:00〜11:05南駒ケ岳、12:15〜12:20越百山、
     14:00ダム駐車場  合計タイム7時間45分
〔装備〕ハイドレーションシステムのザック、レインウェア、長袖Tシャツ(速乾性)、ヘッドランプ、おにぎり1個、パワーバー3本、
     パワージェル3個、水分2.5L。
〔飲食物〕おにぎい1個とパワーバー1/2本と水分全量。
〔服装〕帽子、ラガーシャツ半袖(モンベル製)、タイツ(ノースフェイス製)、短パン、トレイルランニング靴(ニューバランス製)、
     靴下

 


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