◆ 空木岳から千畳敷 −中ア、スピード縦走記−  矢澤昭文

[日 程] 2007年10月12日
[メンバー] 矢沢昭文、金田安代

      
                     (空木岳頂上)

 中央アルプスに足を運んだのは今年4度目だった。最初は1月の厳冬期、2度目、3度目はトレイルランニングのトレーニング
のためだった。そして今回である。ここは愛知県から近く、主に花崗岩でできた山域で、それがとても美しい。また、アップダウ
ンが多く急峻でもあり、そして初心者向けから上級者向けまでの沢も豊富で変化に富んでいる。
 主峰駒ヶ岳は2,956mと3,000mにわずかに満たないが、その近くの千畳敷には年間を通じてのロープウエーが架かり、多く
の観光客で賑わっているが、一歩そこを離れれば夏や秋のシーズンでも割と静かな山行ができる。冬季は駒ヶ岳以外はほと
んど人が入らず、かなり厳しいラッセルを強いられることになる。それが中央アルプスである。

 10月20日開催の日本山岳耐久レース、通称「ハセツネ」がほぼ一週間後に迫った10月12日、紅葉を楽しみながらのトレーニ
ングをと思い立ち、前夜遅く中央アルプスに向け車を走らせた。途中、車中で仮眠をし、早朝、駒ヶ根の「菅の台バスセンター」
の駐車場に着いた。既に多くの登山者が「しらび平」行きの始発のバスを待つべく行列を作っていた。秋真っ盛りの山岳地の寒
い朝、それでも我々はいつものトレイルランニングスタイルで、その行列を傍目に空木岳に延びている池山尾根に向かった。
 スキー場の脇に付けられた登山道に入り、いきなりの急坂を登り始めた。木で作られた階段が続いたが、これが実は歩幅が
合わずとても歩きづらい。やがて道は平坦な部分も出てきて速足を交えて進んだ。樹林帯の中の山道をどんどん登っていった。
高度を上げるにつれ、紅葉が陽に映え秋山の世界が広がっていった。

 森林限界に達する地点に分岐があり、ここで一気に展望が開け前方には空木岳が悠然と構えていた。空木岳まで3時間30分
で着けるか、という程のペースで来ていたのが逆に負担になったのか、同行の金田さんが突然のペースダウン。まだ先は長く無
理は禁物と、きょう初めての休憩をとった。天候が良く秋山の風光をのんびりと眺めた。

 3,000mに近い高所は空気も薄くその先もなかなかペースは上がらなかったが、それでも4時間で空木岳(2,864m)に着いた。
空木岳からは岩場の急下降が続き、クサリ場もあり慎重にならざるを得なかった。下りきった木曽殿越からは東川岳への急登が
待っていた。ここら辺りは山の崩壊が激しくガレ場が多かった。東川岳(2,671m)から熊沢岳(2,778m)、そして檜尾岳(2,728m)へ
と向かったが、一つ一つのピークに至るまでアップダウンが大きく、また稜線は岩場が続きランニングできるようなコースではなか
った。しかし紅葉は素晴らしく、また檜尾岳付近からの三ノ沢岳の山稜は雄大だった。

 檜尾岳からさらに濁沢大峰に達し、休むことなく足を進めた。ガスに覆われ始めた稜線を島田娘(2,858m)に向かうにつれ、これ
までの急峻な岩場とは様相が異なり穏やかになってきた。緩やかな島田娘を越え、やがて極楽平の分岐に着き、そこからよく整
備された道を一気に千畳敷まで駆け下りた。時計の針はちょうど15時00分を指していた。観光客で込み合うロープウエーとバス
を乗り継いで駐車場に戻った。  [記録] 6:30 菅の台バスセンター 10:30 空木岳 15:00 千畳敷

 


個人山行報告目次へ     HOMEへ