◆春に行く山・2題 赤澤東洋

春だ。里では新芽が吹き出し山々は残雪に陽光が輝いている。さあ出かけねば。

1. 大佐飛山(おおさびやま)1908m

   日程   2008年4月2日(水)〜3日(木)
   メンバー 小室豊(CL)、赤澤東洋、井上晴之(東京山楽会)

           
                         (大佐飛山に向かう)

 竹書房の「日本山岳ルーツ大辞典」によると大佐飛山の佐飛(さび)は「そぶ」で、鉄分で濁った水のある山
という意があるらしい。この山名を聞いて何県にあるか即座に分る人はかなりの通と言っていい位に、一般に
は知られてない山だが栃木百名山にも選ばれている知る人ぞ知る栃木の秘峰だ。只、夏は藪に覆われ登山
道もないのでガイドブックの対象外となっており残雪期の今が一番の狙い目なのである。

 朝8時JR上尾駅に集合、桜吹雪の中一路東北道へ。3時間ほどで登山口のある百村(もむら)に至るも登山
口が分らずしばし行ったり来たりとウロウロした後、木の俣林道に車を乗り入れる。落石が転がる中しばらく進
むと、なんと土砂崩れで通行止めときた。仕方なし、ここから歩き出す事にした(12:15)。道路いっぱいの土砂を
乗っ越し作業用の梯子を登り尾根に取り付く。道もない杉林の中重荷を背負ってのいきなりの急登は息があが
る。20kgを越すと情けない程だらしない。1時間ほどで百村山からの登山道に出てヤレヤレだった。2日前に台
風並みに発達した低気圧が通過した際、かなりの降雪があったようでここからスノーシューをつけた。

 16時サル山(1467m)に到着、ここで幕営とする。今夜の小室メニューは野菜ビーフン炒め、マーボ豆腐、
エリンギ炒め、絹さやエンドウ卵とじときた。これでは酒が進まないはずないではないか。誰か酒買ってきてくれ
。3日5時起床。青空も出てまずまずの天気。雑煮を食べ6:25出発。今日はサブザックなので随分楽だ。朝の
うちは歩く度にギュッ、ギュッと雪が締まり快調なペースだったが、陽が高くなるにつれ雪が重くなり井上さんは
ワカンの調子が悪く歩き難そうだ。8:10黒滝山(1754m)着。ここまでは登山道が切り開かれており夏でも登れ
るという。ここからが本ルートの核心部。高低差はないがなんせ長い長い雪の稜線。10:10大長山(1866m)
に達すると、井上さんがここでギブアップするという。トライアスロンで鍛えた剛健な井上さんなのだがどうしちゃ
ったのか。小室さんもチョッと止めようかという雰囲気だったが、時間もあるし、もう2度と来れないかもしれないし、
折角のチャンスだし「行きましょうよ」と促がす。こちらは珍しく調子がいいのだ。申し訳ないが井上さんにはその
場でお待ち頂くことにして2人で頂上を目指した。

 11:10念願の大佐飛山頂上着。写真を数枚撮り引き返す。結局井上さんには2時間余り待ってもらった事に
なる。寒かったのではと思う。14:40テン場に帰着。手際よくテントを撤収し17:00丁度登山口に無事下山する
事が出来た。生半可な気持ちではなかなか挑めないロングコースを遂に達成することが出来て満足、満足。

2. タカマタギ(1529m)−日白山(1631m) ミニ縦走

   日程   2008年4月15日(火)
   メンバー 単独

 
         (棒立山からタカマタギ)                   (東谷山から日白山)

 夕方のテレビで明日15日は日本全国晴れマーク保証致しますと気象予報士の森田さんが自信たっぷり宣言
している。猫の目のように日替わりで変化する春の天気、それはチャンス逃がす手はあるまいと懸案事項消化
すべく急遽出掛ける事にする。上越国境谷川連峰に隣接するタカマタギー日白山の長大な尾根を辿りJR土樽
駅から三国街道二居集落への山越えを一挙にやってしまおうという目論見だ。

 15日朝、まだ真っ暗な2時半上尾を出る。JR土樽駅にて登山届を提出し、歩き出したのが5時40分。土樽―
タカマタギだけに関すればこれが4回目の挑戦となり、勝手知ったる何とやらだが、タカマタギから先、日白山―
東谷山へと連なる長い稜線は未知の領域となりそれなりに緊張し第一歩を踏み出した。森田さんの予報通り雲
ひとつ無い青空、風もなく絶好のコンディションである。杉林を抜けた雪原で6本爪の簡易アイゼンをつけ、尾根
に取り付く。藪が出る前の樹林帯は一面の雪に覆われ不明瞭ながら無数の足跡も残っているので迷う心配もな
く歩き易い。最近は結構こんな渋い山にも人が入っているらしい。登山口から2時間程で登り詰めた稜線は松川
の集落から棒立山へとせりあがる稜線で、ルートはここでほぼ直角に左折し大きな棒立山を目指す。魚野川を
挟み昨年単独で登った荒沢山や足拍子岳が聳え立ちいかにも懐かしい。

 尾根を忠実に辿り雪庇が崩れ藪が出始めた嫌らしい箇所を乗っ越すとブナ林の急斜面となった。なかなかキツ
イ登りだが、ヒマラヤの5千メートルを思えば屁みたいなもので、9時半丁度潅木に覆われた棒立山(1420m)の
頂上に出た。ここから見るタカマタギはとても大きくなかなかいい恰好である。もう目の前なのだが、実際には割
れ目が出て今にも崩れそうな雪庇を慎重に避けながら小さく下って登り返す事約1時間かかってしまった。
タカマタギの頂上からはこれから辿る日白山から東谷山へと続く長い稜線が目に飛び込んできた。随分遠い。
引き返すなら今しかないが、体調もまずまずだしこの好天である。巻機山から谷川岳、仙ノ倉、平標山、苗場山と
続く旧知の峰々に背中を押され前進あるのみ。「こんなチャンスは滅多にあるもんじゃない」

 タカマタギから日白山まではキツイ登りもなく先行者のトレースも残っており、ルンルン気分の雪山漫歩を楽しむ。
「ああ山はいいなあ」。12時丁度宿願の日白山(1631m)に立つ。この領域の盟主であり、振り返るタカマタギは
もうその雄大さは失われ、いかにも平凡になってしまう。荒沢山、足拍子岳に至っては背後の山並に飲み込まれ
まったく精彩ない。面白いものだ。寝転んでノンビリしたい所だが、まだ先もありそうそう呑気に構えているわけに
もいかない。この時間帯になると流石に雪も緩み出しズボッと踏み抜く事も多くなってきたので、ここで簡易アイゼ
ンを外しワカンに履き替えた。最近はスノーシューを履く事が多いのだが、今回は少しでも荷を軽減すべくワカンに
したのだが、結構いける事を確認。テンポよく歩みを進め13時20分東谷山に到着。ここまで来ればもう安心。実は
3日前に逆コースで大塚さん達とここまで来ていたのだ。小雨とホワイトアウトで已む無く退却していたという次第
で今回はそのリベンジだったというわけなのであります。3日前の記憶を辿りドンドンと駆け下り15時丁度二居の
バス停に無事下山する事が出来た。4時のバスで湯沢へ出て、湯沢からはJR上越線で土樽に戻り愛車をピック
アップ、21時半には帰宅する。念願の土樽駅から三国街道二居までの山越え達成、まずは充足の1日であった。


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