■トレイル ランニング レース報告2件


  「トレイル ランニング レース」は、山道や森林の中など、整地されていない道を走ってタイムを競うレース。
都岳連の「山岳耐久レース」はその草分け的な存在。最近では全国各地で行われている。原稿を寄せてい
ただいた矢沢、金田の両会員は、最近このレースで各地を転戦し、大健闘しておられる。(編集担当)

◆悪路をついて「志賀・野反湖トレイルレース」 矢澤昭文

 朝から雨。雨具を着けてのスタートとなった。また40kmのレースが、悪天のため後半の野反湖1周の15
kmが削られて25kmのレースとなった。スタート直後、高天ケ原スキー場の斜面を上り、やがてトラバース
気味にその斜面を下り、そしてワンレーン(1人用という意味)の平坦なトレイルに入った。それが3kmほど
続き、雨さえなければ先ずは割りと快適なトレイルレースの始まりとなった。

 山道に入ると一転して、その道は沢と化していた。それも所によっては濁流、あるいは土石流、比較的平ら
な所では水たまりになっていて、膝が埋まるほどの深さの所もあり、その中には雪が残っているのもあった。
水が冷たいわけである。雪解け水の中に入っていたのだ。その冷たさの影響だろうか、足の筋肉が強張り
普段と動きが異なるような気がした。それでも今回は今年の初レースということもあり、「とにかく進む」という
気持ちが強かった。しかしその気持ちとは裏腹に標高2000m前後の稜線、下りになると雨具を着ていても
寒さを感じた。また雨水で土が掘られ、中に這う木の根に足をとられること幾多、さまざまな場面でタフなレー
スとなった。
 この日、6月29日に備え、2週間ほど前に前半だけ試走を行い赤石山から下りたのだが、その時に見たエ
メラルドグリーンの大沼池は、今日は濃霧で白一色に閉ざされていた。後半に入り風雨をさえぎる樹木がな
くなり、草原の斜面を上っている時には上りであっても寒さを感じ、こんなに厳しい自然に身を晒すことは遭難
の一歩手前だと思い、一緒に参加した女性2名(うち1名がシリウス会員の金田安代さん)は恐らくリタイアし
ているだろうと考えていた。
 ゴールに向かい最後の下りにさしかかったが、雨はずっと続いていた。山道の濁流はますます激しくなり、
疲れのたまってきた足はさらに柔軟さを失い、泥水に隠れた石につまづき、露出した根に足をとられ幾度か転
んだ。白い手袋はすでに真っ黒、顔にも泥が跳ね上がっていた。それでも山道を終えゴール手前のカーブでス
タッフの応援を耳にした時、胸に熱いものがこみ上げてきた。ふらふらになりながらの雨中のゴールだった。

 すでにゴールした選手が泥だらけの靴やウェアを洗っていて、自分もそこに並んだが、身体がどんどん冷え
てきたので汚れたまま体育館に入り、先に運んでもらっていた荷物の中から水を取り出し身体を拭き着替えた。
ザックの中のおにぎりを食べ、やっと人心地がつき、ふと視線を上げると、体育館の入口付近になんと金田安代
さんが汚れたウェアのまま立っていた。てっきりリタイアしたと決めつけていた彼女が、この厳しい中ゴールした
ことは驚きとともに感動した。近くへ行き握手を交わした。頑張った金田さんは50代女子でトップの成績だった。
その後、かなり遅れはしたが、残る1名の女性もゴールでき、驚きと感動が倍増した。

 《成績》 矢澤昭文:6時間12分45秒 総合順位:260位  50代男子:11位
      金田安代:6時間46分13秒 女子順位:16位    50代女子:1位

◆燃焼!「おんたけ・ウルトラ トレイル レース・100km」  金田安代

             
           100キロレースを並走する金田会員(左)と矢澤会員(右)

 「己を鍛え、己を知ることから始まるトレラン100kの道」と主催者の言葉があったが、私の場合、今回のこの
レースは、そんな甘い言葉で済まされるレースではなかった。己を知ることなく普段と何の変わりもないトレー
ニングをしただけで、未知の距離に飛び込んでしまったのです。そんなこのレースとは、霊峰御嶽山の麓「大滝
村」の大自然に切り開かれた、アップダウンの激しい林道を、100kmにわたって駆け抜けるというものであった。

 7月20日深夜0:00、車中で数時間の仮眠をとりスタートラインに立った。スタート直後から10km以上の登り
が続いており、林道にさしかかった時には最後尾にいた。先は長いとマイペースで走ったり、歩いたり、それでも
第1関門(30km) の小エイド(水分補給所)、には多数のランナーが休憩をとっており最後尾脱出。おにぎりを
1個ほおばり軽くストレッチをして出発、夜も明け、陽が差し始めると気温がじわじわと上がってくる。

 第2関門(65km)を目前にして体が思うように動かなくなってきた。一緒に走ってくれていた矢澤昭文さん
(シリウス会員)と離れ、1人とぼとぼと歩き始めたが、まだここでリタイヤする訳にはいかないと力をふりしぼる。
第2関門でも多くのランナーが休憩をとっており、その中に矢澤さんの顔を見つけほっと一息、だがそれもつかの
間、デポしておいたはずの自分の荷物が届いていなっかったのだ。これから先の水分、行動食等々、無いとなる
と不安が募るが前に進むしかない。

 ここから先は暑さとの戦いだった。所どころにある天然エイドステーション(沢筋)で、頭から水をかぶっては先
に進む。第3関門(82km)までは激しいアップダウンが続いており、気力との戦いだが、大滝村の美しい大自然
が心を癒してくれる。第3関門、ここまで来れば後は何とかなる・・。と心は思うが身体は悲鳴をあげている。2カ所
の登りをこなし最後の力を振り絞ってゴールイン    
 「終わった・・・。」喜びと感動の瞬間です。・・・のはずだったのですが、この直後私に悲劇が待っていたのでした。
一息つき車に戻ろうと立ち上がった瞬間、あたり一面真っ暗になってしまったのです。まさに“燃焼”です。その後
何とか車には戻れたものの、一番の楽しみの温泉に入ることもできず帰路についたのでした。100kmの道のり
に様々なドラマがありました。感動しました。

 ≪成績≫ 金田安代:15時間55分12秒 女子順位:8位    50代女子:1位
        矢澤昭文:15時間48分26秒 男子順位:123位  50代男子:16位


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