◆北海道・自転車一周と3山登頂 〈第2部〉
      礼文島から帰着まで −羊蹄山に登る−  赤澤東洋

         
                      (道内のルート<点線>)

〇17日目(2008年7月22日) 礼文島→稚内→天塩  走行距離73km
 礼文岳への登山を考えていたが、あまり良い天気ではないので稚内へ戻ることにする。
10:40稚内港着。こちらは薄曇り、道路は乾いている。右手に薄く利尻山を眺めながらのサロベツ原野を 行
く。なかなか快適だったが、午後になりまた雨となり逆風に押し戻される。漸く辿り着いた天塩道の駅は街中
にあり、テントが張れそうにないのでキャンプ場に移動。雨なのでキャンプ場内のライダーハウスへ逃げ込む。
プレハブでも屋根があるとほっとする。近くに温泉あり。

〇18日目(7月23日)天塩→小平   走行距離106km
 夜半かなりの降雨があったが、朝になり止んでくれる。雨、風がないと気分も違うし走りも違う。吉村昭の「羆
嵐」で一躍有名になった苫前町を経て留萌市の手前小平町の望洋台キャンプ場に入る。ここは高台にあり上り
がキツかった。とうとう下りて自転車を押して登る始末。車のことしか考えてないキャンプ場だ。夜キャンプファイ
ヤーをして騒ぐのでと近くの若者から缶ビール2本の差し入れあり。

〇19日目(7月24日)小平→石狩  走行距離143km
 今日は長丁場を覚悟。天気は久しぶりの晴天。風もなく留萌市、増毛町とまずは快調に走る。増毛から先は
暑寒別岳から直接落ち込む断崖沿いの道路となり、トンネルだらけであっちでもこっちでも工事している。北海
道は道路工事が本当に多いことを実感する。2〜3キロの長いトンネルが多く、抜けてホッとするとまた同じよう
なトンネルが待ち構えている。床丹の道筋でウニ丼とタコ刺を頂く。浜益村からの200mの上りで顎を出す。足
はパンパン。アンメルツ塗りたくって誤魔化すしかない。石狩市に入り望来浜海水浴場キャンプ場にテントを張
る。風が強いので海の家の中に張らせてもらう。ここまで来ると先も見えノンビリと日本海に沈む夕日を見て寛
ぎ風呂代わりに海で戯れる。

〇20日目(7月25日)石狩→小樽→倶知安   走行距離123km
 どこに泊るか決めかねてとうとう120kmを越してしまう。しかもパンクというアクシデントの中。最初のうちは
快調なペースだった。札幌―小樽を結ぶ5号線に出ると、とたんに交通量が増え道幅も狭くなり走り難くなる。
銭箱で後輪パンク。最寄りのコンビニにて修理。硬い針金がタイヤに食い込んでいた。交換と修理で1時間以
上ロス。小樽は駅に立ち寄っただけ。道も狭く坂が多い自転車には向かない街だ。余市も泊まるに適当な場
所なし。時間も早いので先に進んだが、交換したタイヤがまた調子悪くなる。修理済みのチューブに漏れがあ
るようだ。急きょ荷物を全て下ろして1からやり直す。少し焦る。ここまで来たらもうニセコまで突っ走るしかない
が、この先には稲穂峠と倶知安峠という恐怖の峠越えが2ケ所も待ち構えているのだった。倶知安で自転車
屋を探し空気入れを借りる。結局、羊蹄山登山口の駐車場着が夕方6時というギリギリの時間、ハードな1日
であった。

〇21日目(7月26日)羊蹄山登頂→ニセコ   走行距離20km
 札幌で冬季オリンピックが開かれた前年、会社の同僚たちと手稲、ニセコへスキーに行った時に見た羊蹄
山が印象に残り、いつか登ろうと思っていた。1971年1月中旬のことだから37年越しとなる後方羊蹄山。    
 4:00起床、誰もいない山中の駐車場。今日も山は天気がいいらしい。5:00出発。もう何人か先行者がい
る樹林帯の中歩きやすい登山道だ。2合目、3合目と歩調に合わせていいタイミングで標識が出てくる。
7:10、5合目。背後を振り返るとニセコアンヌプリ(1309m)が雲海の上に顔を出している。日差しがだんだん
強くなるが、ナラやナナカマドなどの灌木の中なので直接太陽に当たらないから涼しい。7合目、8合目と登る
につれ背後のニセコアンヌプリが全容を現し、スキー場の様子が良く分かる。サラサラの雪質で上越とは全然
違っていたことを思い出す。
 足元には沢山の高山植物が咲いている。斜里、利尻と並べた3山の中ではここが一番登りやすく初心者向
きの山だろう。10:00羊蹄山山頂着、大きなお釜を囲む荒々しい火口壁が印象的だ。頂上には10人ばかり
の先行者が思い思いに休んでいた。天気に恵まれ皆さん晴ればれとした顔、満足そうだ。洞爺湖がすぐ眼の
下に望まれる。こんなに近いとは。
 北海道3山無事登頂。3山共に天気に恵まれたのはラッキーとしか言いようがない。大満足。気分を良くして
駆け下り、テント撤収。ニセコ道の駅でオートキャンプ場を紹介してもらったが、これが昆布温泉のさきでずっと
上り坂、すぐ近いですという女の子は車を想定してのこと。ツライ登りに顎を出す。サヒナキャンプ場は家族連れ
が多い賑やかなキャンプ場。

〇22日目(7月27日)ニセコ→長万部→豊浦   走行距離101km
 自転車向きではないキャンプ場。早々に退散。途中黒松内道の駅のトイレは久しぶりのウオッシュレット。
手作りパンが美味しい。長万部では名物駅弁「カニメシ」を食べてみたがまったくの期待はずれ。久しぶりの太
平洋に沿う37号線だが、ここでも厳しい峠越えに泣かされる。おまけにトンネルも多い。海水浴場のある豊浦
海浜公園にテントを張る。お天気の日曜日とあり人出が多い。太平洋で水浴びし温水シャワーで風呂代わりと
する。

〇23日目(7月28日)豊浦→室蘭→白老   走行距離71km
 キャンパーの食糧狙うカラスの鳴き声で目を覚ます。浜風が強い。7時ごろから雨が降り出す。サミットの開か
れた洞爺湖町を過ぎ、伊達市街に入ると本降りとなり道の駅でしばし雨宿り。その後も何度かバス停の小さな
小屋に避難し風雨をしのぐ。まいったなー、もう。とはいえ、ゴールは間近であまり不安はなく、バス停のベンチ
でひと眠りしてしまう。
 室蘭を過ぎたころからいよいよ本格的な雨となる。半端じゃあない。しばしラーメン屋で雨宿りするも止む気配
なし。今日はかつて仕事で訪れたことのある白老町の虎杖浜温泉に泊まることに決めているので、しばし躊躇
しつつも気合を入れてまた雨の中に飛び出す。それにしても凄い雨。猛烈。まさにずぶ濡れ、大きな声で天を
呪い、喚きながらペダルを漕ぐ。もう開き直るしかない。その夜のテレビでは、苫小牧は1時間63mmもの雨で
7月としては記録的な雨と伝えていたくらい。神戸で鉄砲水で5人が亡くなる事故があった日だ。登別温泉に
近い虎杖浜温泉は、あまり知る人はいないがなかなかいい温泉で、仕事でこの近辺にきた時はよく利用してい
た懐かしの場所。温泉ホテルはくように投宿。冷え過ぎて肺炎になりそうなので、濡れたものに構わずまずは
ひと風呂、ビールをあおってひと息つく。北海道最後の夜。途中室蘭で民宿などに立ち寄らず、ここまで頑張っ
た甲斐があったというものだ。

〇24日目(7月29日)白老→苫小牧   走行距離45km
 今日は夕方までに苫小牧に入ればいいのでノンビリだ。幸いに雨も上がり、北海道最後の自転車走行を堪
能する。アップダウンのない太平洋に沿った平坦な道だが、時折車線が狭くなりトラックがスレスレに通るので
最後まで気が抜けなかった。苫小牧魚市場内にある「ぷらっとみなと市場」にて有名なホッキ丼を食べてみる。
フェリーはガラ空きで、大部屋も80人定員のところ20名ぐらいしかいないので、ゆったりする。7月末はフェリ
ー代も季節料金で11800円と高くなっていた。

〇25日目(7月30日)苫小牧→大洗→上尾   
 14:00大洗港着。全走行距離1850km、よく走ったものだ。さすがに当分自転車には乗りたくない気分と
なり、電話して息子に迎えに来てもらう。自転車だと1日かかる133kmも、車なら2時間半。かくて我が北海道
自転車の旅は無事終了。狙っていた3山にも無事登頂できたし、経費も25日間145000円程で済ませること
ができて万々歳だ。深刻な景気後退に悩む北海道経済に貢献することはできなかった点忸怩たる思いが残る
ものの限界への挑戦という意味でもホノルルマラソンや山岳耐久レース完走にも勝る達成感に手ごたえ感じて
大満足というところである。


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