◆黒戸尾根より「甲斐駒ヶ岳(2,967m)」 藤野孝人

  ◎日程:2009年4月11日〜12日
  ◎メンバー:L.藤野、松山さん(ゲスト)

                  
 
          黒戸尾根上部                    甲斐駒頂上から北岳を望む

 標高差2,200m。登山口から山頂までの標高差が2,000mを越える山は、あまり多くはない。八ヶ岳方面から
見る雪に被われた甲斐駒はなかなか魅力的で、標高差の大きな黒戸尾根は気になっていた。こんなとき、
「七丈小屋は管理人がおり、自炊なら泊まれる」と聞いた。七丈小屋までなら標高差は約1,600m。ここをベー
スにすれば、一泊二日でやれそうだ。ヨシッ! と、冬季の北岳や阿弥陀岳の南稜を一緒にやった松山さんに声
を掛け、急いで計画した。
 結果は天気に恵まれたこともあり、好印象の山行となった。ひとの姿がない深深とした雪の積もった樹林帯
は、まさに南アルプスらしい。また、刀利天狗付近からの梯子や鎖が適度なアクセントになっており、更に上部
の雪と岩の世界もなかなかよかった。

 標高約770m、横手の駒ヶ岳神社口から歩き始めて、約6時間で標高約2,200mの五合目小屋跡に到着した。
見上げると形のよい岩が林立した甲斐駒の上部が見え、なかなかのビューポイントである。しばしの休憩後、
七丈小屋まであと標高差は200mほどであるが、「水平距離では600mほどだ」と自分に言い聞かせて、「ヨイシ
ョッ!」と腰を上げた。ロープやガチャ、アルコールなどを詰めた荷は18kg。はじめは軽かったがだんだん重くなり、
もっと軽くしておけばよかったと反省。雪を被った梯子や、小さなピークを越えるので結構きつく、1時間25分も
要して標高約2,400mの七丈小屋に到着した。

 中に入るとストーブがたかれ暖かい、お湯も無料で分けて頂ける。コーヒーにお汁粉のサービスもある。管理
人さんはなかなか親切である。先客はそれぞれソロの方が3名。我々は早朝自宅発であるが、皆さんは前夜
登山口にて車内泊、早朝出発されたとのことであった。
 飲みすぎたせいか、翌朝、寝過ごしてしまい、5時出発と思っていたが、6時20分発となってしまった。それで
もトップでの出発である。小屋からいきなりの急登となる。雪はしっかりしまり歩きやすいが、昨夜のアルコール
が残っているためか、なかなかエンジンがかからない。間もなく我々の直後に出られたソロの方に追い抜かれ
た。しかし先行者がいると、ルートが分かりやすくて楽である。八合目付近から雪と岩の高山らしい雰囲気とな
った。幸いに無風快晴で展望もよいことから、撮影タイムを取りながらゆっくりと登る。上部の難所は積雪状態
が良かったためか、気がつかないうちに通過してしまった。

 やがて祠のある甲斐駒ヶ岳の山頂に到着した。360度の眺望とはこのことだろう。近くの雪に被われた北岳
や仙丈は特に大きく見事である。秋に縦走した鋸岳はあまり雪がついておらず、行けそうな感じではあるが、
テントを担いではきついだろう。年末年始や残雪期に何度か登った駒津峰からのコースは、トレースが見えな
かった。遮るものの無い世界をしばし楽しむ。なごりおしいが、二人目のソロの方が登頂されたのを機に、下山
とした。下りは楽ではあるが、気温が高くなったため踏み跡を外すと腿まで潜る。七丈小屋に戻ると、丁度三人
目のソロの方が下山されるところであった。八合目付近まで登って写真撮影だけで下山されるようだ。この日
の登頂者は、ソロの方が2名、我々が2名の計4名であった。
 我々は小屋でお湯を頂き、早めの昼食とした。先は長いのでしっかりと食べた。登るとき雪がカチカチに凍結
していた梯子は、ひょっとすると懸垂下降かな? と思って、ハーネスを着けていたが、雪が適度に緩んでいたの
でそのまま降りられた。刃渡りで鳳凰三山の最後の眺望を楽しみ、後は静かな樹林帯を延々と下った。甲斐
駒ヶ岳・黒戸尾根! 久し振りにロングコースの雪山を堪能した二日間であった。

<コースとタイム>
 初日=横手駒ヶ岳神社登山口(8:20)―横手・白須分岐(10:55-11:05)―刀利天狗(14:10)―
     五合目小屋跡(15:15-20)―七丈小屋(16:45/宿泊)
 二日目=七丈小屋(6:20)―甲斐駒ヶ岳(8:40-9:05)―七丈小屋(10:30-11:20)―五合目小屋跡(12:10-20)―
       刀利天狗(13:15)―横手・白須分岐(15:00)―横手駒ヶ岳神社登山口(16:30)


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