◆360°の雲海の展望の山・シリベシ
 (後方羊蹄山(シリベシ山)1898m)  深澤 裕

  ◎2009年7月29〜31日
  ◎メンバー:単独

7月28日(火)
 4年ぶりの北海道です。蝦夷富士とも呼ばれるコニーデ型の独立峰、シリベシ山に登りに来ました。7月17日にトムラウシでツアー登山者18人が遭難。13人がヘリで収容され8人死亡。別の男性登山者1人が死亡。美瑛岳では3人の女性客と3人のガイドが遭難。そのうち女性客1人死亡するという悲劇が起こった北海道。重度の低体温による疲労凍死でした。私も行く前は緊張していました。取り敢えず現地に行って、無理だったら温泉にでも入ってリラックスしようと思ってはいたものの、内心晴れてほしいと未練タラタラです。
 28日の飛行機も天候不順なら羽田に引き返すという条件でのフライトでした。無事千歳空港に着き、札幌でレンタカーを借りて午後2時。既に雨模様。もし天気だったら、今日中にシリベシの避難小屋まで登ってみようと考えていたのですが諦めて登山口近くの比羅夫温泉に宿を取ります。倶知安駅前のスーパーで買ってきた夕張メロンとカマンベールとジャーキーをつまみに「おたるワイン」を呑みながら地図を眺めます。

7月29日(水)
 3時頃に起床、暗い空を眺めては迷っていました。かなり激しい雨がふっています。パッキングし、取り敢えず風呂に入っていると雨音が小さくなりました。空が明るくなり、これなら何とかなると思い出発します。近くのコンビニで食糧を買い込み登山口へ向かいます。この山には4つの登山道があります。真狩コース・喜茂別コース・京極コース。今回は倶知安(比羅夫)コースから登ります。登山口にはテントが2張。車が5台ほど止まっています。キャンプ場としても整備されています。テントを持ってこなかったのですが、ここでキャンプしても良いと思いました。この山は水場が無いので水を3リットル持ちました。ビバークに備えてチェルトやシュラフも持参しています。非常食もたっぷりと持っています。
 雨は降り続きます。5時。雨具を付け、ザックカバーをし、傘をさし登山届けを出して登り始めます。なだらかな針葉樹林が続きます。この山ではマラソン登山大会をやるようで、各合目ごとにしっかりと道標があります。5合目を過ぎると雨が上がり雲を抜け、少し展望が開けてきます。6合目で雲海が広がります。1200m位に雲が広がっています。雲海の中に黒いニセコアンヌプリが島のように浮かんでいます。絶景です。ハイマツのトンネルを抜けると9合目です。ここからツリーラインです。直登せず避難小屋に向け道を選びます。見事なお花畑が続き、見渡すと雲海が広がり高度感を感じます。
 ハイマツに囲まれた避難小屋には管理人一人と犬が一匹。ドアを開けて挨拶をすると犬におもいきり吠えられました。客は誰もいません。毛布200円。布団300円と値段表が貼ってあります。50人は楽に泊まれる立派な小屋です。ストーブには石炭が用意されてあります。さすが北海道だと感心していると、管理人がこの山で起きた事件の話をし始めました。
 その事件とは99年関西の旅行社のツアー登山者14人のうち2人がここの頂上付近で遭難凍死したものです。一人だけのツアーガイドが安全確保を怠ったとして業務上過失致死罪に問われ有罪判決となりました。ツアーガイドが刑事責任を問われた日本で初めての裁判だそうです。彼は世捨て人のような達観した口ぶりでツアー登山を批判し始めました。確かに用意されたツアーで「人任せの登山」が招いた悲劇という面があるとは思います。私は遭難した経験はありませんが、常に何かあったときのためのビバーク用の準備をしています。特に今年の北海道は天候不順なので今回は食糧も多めにしました。ツアー登山でも単独行を意識し、緊張して歩くことが大事だと思います。また自分の体力・気力・十分な装備・スキルを高める努力を怠らないことが大事だと思います。あとは天候次第です。山は逃げないのでまた登れば良いのです。
 小屋で少し休み、頂上に向かいます。シラネアオイなどあたりは一面のお花畑。約1時間で頂上です。ここのお鉢は富士山ほど大きくないのでだいたい2時間で一周できます。噴火口もきれいにすり鉢状になっています。わたしは時計の反対周りで歩きましたがスリルのある岩場もあり楽しめました。頂上には6人ほどいました。お鉢巡りをしている間、広がる雲海が見渡せました。360°の雲海を眺めるのは富士山以来です。太陽もようやく顔を出し、快適なお鉢巡りとなりました。満足し5合目まで降りると、またどんよりとした雲が広がります。晴天は雲海の上だけでした。14時に登山口に到着。靴を洗い、道具等を片づけ、車に乗ります。もう雨は上がりました。カーナビを近くの「薬師温泉」にセットしました。

7月30日(木)
 翌日、晴天になったので「真狩温泉」に行き、ここの露天風呂から雲のほとんどかかっていないどっしりと重いシリベシ山を眺めました。シリベシ山を確かめられて満足しました。この後「五色温泉」「二 股ラジウム鉱泉」「然別湖温泉」「登別温泉」「菅野温泉」(営業中止)などを巡りました。源泉かけ流しの素晴らしい温泉を堪能しました。

7月31日(金)
 東大雪の名峰二ペソツ山に日帰り登山で登ろうと思って「幌加温泉」に泊まりましたが、時間的に厳 しいので断念しました。時間ができたら、また寄らせてもらいます。また退職し、夫婦で個人でと温泉巡りを楽しんでいる方々の多いこと。驚きました。楽しみがまた増えました。あんなに悪かった天候も回復し快適な山行ができたことに感謝です。


<コースとタイム>
 倶知安(比羅夫)コース 登山口(5:00)〜9合目〜避難小屋(9:00)
 〜山頂(10:00)〜お鉢巡り〜9合目〜登山口(14:00)

<お役たち情報>
 比羅夫温泉「ホテルニセコスコット」素泊まり5130円。
 「薬師温泉」 一泊二食付 6300円
 幌加温泉「鹿の谷」 素泊まりのみ・シュラフ持参の場合2500円


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