日程: 2013年5月2日(木)~5日(日)
メンバー: 藤野(L)、石川(食担)、深澤淳(記録)
報告: 藤野

 

 

 4日午前4時40分、我々はアイゼンを着けてピッケルを手に、標高約2,600mの三伏峠小屋(冬季小屋)前を出発した。無風快晴!!昨日と同様好天気だ。目指す塩見岳は標高3,052m。標高差は約450m? そんなに甘くはない。この間に本谷山をはじめ多くのピークがあり、アップダウンを強いられ、深澤さんのGPSによれば、累計標高差は約1,437m。しかも山頂直下は急な雪面と岩場が連続する。往復距離は10.36Km。我々は約10時間を要した。
 南アルプスらしい樹林の中、クネクネとした踏み跡をひたすら追っていく。時折、樹林の切れ目があり、展望が一気に開け岩と雪に被われた塩見岳が見える。岩と雪の殿堂と言えば「剣岳」であるが、この塩見岳もなかなかのものだ。登るにつれ塩見岳の角度が変わり、大きくなっていく。深澤さんはその度に「ちょっと待ってください」とカメラを取り出す。早く行きたいが、この眺望を見ないで行くのは惜しい。塩見岳を見つめながらしばし待つ。これを繰り返しながら登っていく。
 権右衛門山を過ぎると、塩見岳が更に大きくなり、いよいよ近付いたと、高揚する。途中追い抜かれた愛知県の若い5人パーティが、はるか前方をドンドン登って行く。一息入れ、我々も後を追っていく。夏道を辿って天狗岩を巻いて行くが、この付近から岩と雪のミックス帯となる。稜線に飛び出ると、先行の愛知の5人パーティが休憩していた。我々はここで休まず、後ろの二人に「このまま行くよ」と声を掛け、そのまま進む。岩と雪のミックスになると元気がでる。ギアチェンジしたかのようだ。二人もついてくる。アップダウンが多く、急な斜面もでてくる。一箇所ショートカットで夏道を外し、踏み跡のない急な雪面をアイゼンとピッケルを利かして登った。更に岩が出てくる。この岩を登れば山頂か?と思って登っていくとまだ先があり、何度かだまされる。何度目かでやっと山頂の標柱が見えた。後ろの二人に「山頂だ!!」と伝えた。ついに3,047mの塩見岳西峰に到着した。9時30分であった。360度の眺望だ!! 二人とも嬉しそうだ。写真を撮って、すぐ先の3,052mの東峰に足を延ばす。東峰からは蝙蝠岳や北荒川岳が近いのは当然だが、長大な南アルプスの山並みが延延と続く壮大な眺めだ。写真を撮ったり、眺望を楽しんでいると、愛知の5人パーティが西峰に到着した。そして彼らも東峰に到着した。名残惜しいが、しばらくして我々は下山を開始した。天狗岩付近の岩場を抜けるまでが核心だ。距離は短いが、斜度50度?くらいの急斜面もある。登ってくるとき、すでに雪は少し柔らかかった。雪が腐るとアイゼン、ピッケルが利かなくなるので、なるべく早い時間に下山にかかるのが安全だ。斜度の強い箇所は後ろ向きになって、アイゼンとピッケルを緩くなった雪面に利かせて下った。
 核心部を過ぎるとひと安心。あとは三伏峠小屋まで戻れば良いだけなので、ゆっくりと休憩を繰り返し、眺望を楽しみながら歩を進めた。下りのはずなのに登り返しが多く、スタミナが要るコースである。途中から少しずつ雲の様子が怪しくなり、最後のピークの三伏山に戻った頃には、上空に黒い雲が現れた。そして14時30分、小屋の前に戻った。このとき、雪が降り始めた。あんなによい天気だったのがウソのようだ。今朝我々の後に出発した都内の5人パーティがいたが、小屋の前でその1人に迎えられた。
 聞くと、「腰が痛いので途中から戻った」とのこと。「4人組に会わなかったか」と聞かれた。「我々が下ってくるとき、天狗岩付近の岩場で休憩しておられた。あと2時間くらいで戻られると思う。」と伝えた。実際はもっと遅くなったが無事帰還された。最高年齢者は73歳とのことで、雪の降る中を大変であったと思う。
 もう二十年くらい前、この塩見岳を男性2人でアタックしたことを思い出した。あのとき三伏峠小屋を早朝ヘッデンで出発して、ヨレヨレになって戻ったのは薄暗くなる直前であった。トレースが薄かったことや、あまり健脚ではなかったこと、急斜面でロープを出したりしたことなどもあり、時間がかかったのであった。
 今回はシリウスで一番の若手の石川さんも、三番目に若い深澤淳さんもなかなか強いことや、トレースがあったこと、ロープを出さなかったことなどで、比較的早く戻ることができた。
 3日は鳥倉林道のゲート前を6時20分に出発。林道を40分歩いて豊口山コース登山口より三伏峠への登山道に入った。登山口より三伏峠までは4Kmほどであるが、途中、1/10、2/10、・・・・。と距離に応じて表示があり、距離が分かりやすい。「三伏峠まで後2Km」の表示の少し上から凍結道となり、アイゼンを装着した。すぐに雪のトラバースが連続するようになった。踏み跡が片足の巾くらいしかない場所もあり、トラバースのよい練習になる。塩川方面との分岐、豊口山分岐は標柱が雪に埋まっていたのか、外されていたのか見えず、塩川方面の踏み跡もなかった。塩川の林道が通行止めになっているためであろう。
 三伏峠小屋には11時半に到着した。冬季小屋を覗くと、2~3人用のエスパースが一張り。その前が空いていたので、我々もエスパースを張らせていただいた。無風快晴なので外でもよいが、屋内の方が快適で何かと便利なのは言うまでもない。さっさと張って、明日登る塩見岳を正面に眺められる場所に移動して、早速水作りをする。「きれいな雪は?」、「屋根の雪だ」と、石川さんがスコップと大きなビニール袋を持って、冬季小屋の屋根の雪を取ってきてくれた。石川さんは冬山・雪山をはじめて2年目。すっかり要領を覚えたようだ。3人でコンロ3台を並べ、飲みながらどんどん水を作った。2泊の予定なので、行動用の水筒の他に10Lも作った。これで安心。おかげで4日は山頂から戻ったとき水作りは不要で、さっさと食事ができ、早くシュラフに潜れた。5日の朝も炊飯用の水と行動用の水で丁度であった。
 5日の朝、5時40分、下山を開始した。早朝で雪が固くアイゼンが良く利き、トラバースも楽であった。8時、登山口に無事下山。ゲート前より車で鹿塩温泉に向かった。ノンビリと朝湯に浸かり、充実した山行の余韻を楽しんだ。
 石川さんはいつものことながら食担を引き受け、2泊分の共同食を工夫してこなしてくれた。若いのに大したものだ。深澤さんは記録を引き受けてくれた。深澤さんも意欲的なので、今後いろいろと覚えてくれるだろう。テント、ロープなどの共同装備なども二人が分担して担いでくれた。今回、若い二人から元気を貰って快調であった。石川さん、深澤さん、ありがとう!!
   
<コースタイム> 
2日: 時間は省略(車での移動のみ、鳥倉林道にてテント泊)
3日: 鳥倉林道ゲート6:20―7:00豊口山コース登山口7:05―11:30三伏峠小屋(泊)
4日: 三伏峠小屋4:40―三伏山―6:00本谷山―9:30塩見岳西峰9:35―9:40東峰
―13:00本谷山―三伏山―14:30三伏峠小屋(泊)
5日: 三伏峠小屋5:40―8:00豊口山コース登山口―8:35林道ゲート
 
 
三伏山付近からの塩見岳です。まだまだ遠いです。   塩見岳がだいぶ近付いてきました。
     
 
塩見岳がだいぶ近付いてきました。   塩見岳西峰です。
     
 
塩見岳東峰での記念の一枚です    

 


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