日程: 2013年7月20日(土)~21日(日)
メンバー: 藤野(単独)
報告: 藤野

 

 
出合小屋   「蟹のハサミ」の直下より
中央突破も試みたが、素直に左を巻いた
 
 「チュン、チュン、チュン・・・」、「小鳥のさえずりだ・・・ウン?・・・朝だ!!」出合小屋の中はまだ薄暗かったが、すぐにシュラフから抜けだした。外に出てみるとあちこちから、ゆっくりとした小鳥のさえずり、澄んだ沢の音、ひやりとした空気。心地よい豊な自然・・・、まことに気持ちがよい。
 急いでコンロに火を付け、玉子スープにお餅を入れる。お餅は腹持ちがよいので山の朝食はお餅にすることが多い。前日のうちにアタックザックの仕度はできている。ひとりなので岩峰は全部巻くつもりであるが、万一のために30mのロープ、ハーネス、ガチャを少々、捨て縄も入れた。シュラフや食器など、置くいていく荷を片付け出発準備をし、小屋の前に出てストレッチをする。もともと身体は硬く起きぬけは特に硬いので、時間を掛ける。怪我防止のためヘルメットを被って、戸締りをして出発。なにせ昨夜はひとりで小屋を使わせていただいた。
 すぐに赤岳沢に出会い、これを遡行する。左岸や右岸の踏み跡や、沢のなかを飛び石でいく。昨日、取り付きまで下見をしておいたのでスムーズだ。間もなく右岸の樹に赤テープを見て、これより天狗尾根を目指して、急登を行く。
 笹薮には踏み跡はないが、しばらくして樹林に飛び込んだ。すると踏み跡が見つかった。これを行くとすぐに天狗尾根に乗った!! 何と小屋を出てから30分であった。十年ほど前だったかその昔、M.Sさんと二人で来たときは、天狗尾根から赤岳に登り真教寺尾根を下ったが、この赤岳沢から天狗尾根間は密集したものすごいヤブで、天狗尾根に乗るのに随分と時間と体力を要したのが、ウソみたいだ。あとは尾根を外さないよう、踏み跡を登って行く。
 小さな岩場に出ると展望が開け、上部が見えた。まだまだ先は長い。ひたすら踏み跡を登っていく。ようやく蟹のハサミの直下に出た。テントを張れるスペースがあり、ここで大休憩。
 蟹のハサミは左から巻くのが簡単だが、真ん中を越えられないかと、途中まで登ってみた。しかし向こう側がどうなっているのか見えず、降りられなければやっかいと思い、戻って素直に左から巻いた。
 
 
第二岩峰
 
  大天狗岩
   
     
 次の大きな岩峰は、前回の記憶通りに右から易しいスラブを少し登って、巻いてルンゼを登った。足元は切れ落ちているので、冬季はロープが欲しいところだ。古い固定ロープが回収されて、取り付き付近に畳んであった。
 やがて核心の大天狗に到着した。前回、大天狗はどこを登ってクリアしたのか記憶がない。今回は一番易しいところを巻くつもりであるが、先ずは直登コースの取り付きを見に行った。ハーケンが3本打ってあった。ここから戻るとき少し下るが、この時うっかり浮石に足を乗せてしまった。足元がグラッと動いてヒヤッとしたが、すぐに横に移動してセーフ。右ルートは登れそうだが、さらに易しいルートを探す。基部に狭いが踏み跡が見えた。足元は切れ落ちているのでこれを慎重に行く。この巻きは、冬季は無理だろう。岩を回りこむと藪となったが強引に漕いで、本来のルートに出た。右ルートの終了点を見に行くと、鎖が設置されていた。
 
     
 
小天狗 左に明瞭な巻きの踏み跡があった
 
  縦走路より登って来た天狗尾根を見下ろす
左が小天狗、右が大天狗
 大天狗を超えれば後は楽勝である。赤岳―キレットの縦走路を行く登山者もよく見える。思わず「ヤッホー!!」と叫んでしまった。小天狗は左側にしっかりした踏み後がついており、簡単に巻けてしまう。そのまま登って縦走路に出た。縦走路を下ってきた一般登山者が間違って天狗尾根に入り込まないよう、進入禁止のロープが張ってあった。このロープは親切だ。ここで大休憩。登って来た天狗尾根を見下ろす。大天狗と小天狗がアクセントになり、絵になる光景だ。登ってくるひとの姿は見えなかった。
 キレットの縦走路は、ガラガラ、ザレザレの箇所が多い、登ってくるひとが多いので、落石をおこさないよう注意しながら下った。キレット小屋の前のベンチで一本。追い抜いてきた登山者が到着したので、ベンチを空け出発する。これよりツルネを目指して登りになるが、距離は短い。登りついたツルネのピークは穏やかで広い。コマクサのちょっとした群落があったが、残念ながらその盛りを過ぎていた。
 これより権現岳への一般縦走路を外れ、ツルネ東稜を下る。ツルネ東稜ははじめて足を踏み入れるが、降り口に赤テープがあり、しっかりした踏み跡があった。ところどころテープがありこれを確認しながら下る。一箇所、間違いやすい分岐があるハズと思って注意していたが、間違ってしまった。少し下っておかしいと思い、登り返した。すぐに本来のルートが分かった。間違い踏み跡は皆さん往復されるので、はっきりした踏み跡になっている。単に踏み跡を追っていくと間違ってしまう。バリエーションルートでは良くあることだ。
 やがて沢の音が聞こえ、沢のすぐ側に降り立った。そこには「ツルネ東稜」を指し示す標柱が立てられていた。ツルネ東稜は岩場がなく降りやすい、冬季の下山ルートに使用されるのがよく分かる。沢を下って出合小屋に向かった。小屋に近くなると、にぎやかな人の声。?? 小屋の前で7-8人が談笑しながら昼食中であった。登山のスタイルではない。挨拶をして「高根山岳会の方ですか?」と聞くと、まさにそうであった。お話しを伺うと、小屋のトイレを作りにこられたとのこと。現在のトイレの前に新しいトイレを作られるのだ。ありがとうございます。出合小屋は高根山岳会が建てられ、維持管理されている。山小屋は維持管理が大変だ。
 急いで昼食を摂り、残置しておいた大きなザックにパッキングをする。出発するとき高根山岳会の方は、作業中であった。挨拶をして下山開始。「またやって来たい!」と思いながら、地獄谷をゆっくりとくだった。何回も徒渉するが水流があったのは、上流側の2箇所のみであった。
   
<コースタイム> 
20日:美し森駐車場12:40―林道―地獄谷―14:40出合小屋(泊)
21日:出合小屋5:10―赤岳沢―5:40天狗尾根に乗る―6:10展望の良い最初の岩場―
   7:30蟹の爪直下―第2岩峰―8:00大天狗8:35―小天狗―8:50縦走路―
   9:25キレット小屋9:35―10:00ツルネ10:10―ツルネ東稜を下る―11:30沢の側に降り立つ―
   11:45出合小屋12:30―地獄谷―林道― 14:30美し森駐車場

 

 


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