日程: 2015年5月10日(日)
メンバー: 藤野(L)、斎藤(光)、豊川
報告: 豊川

 

山頂直下の鎖場
 
 のっけから乾徳山には申し訳ないけれど、今回は甲斐駒黒戸尾根のトレーニングとして藤野さんが選んでくださった山だった。 だから、岩場とクサリの経験を積むだけのつもりで山に入ったのだった。
大きな古い家がいくつも残る徳和集落から登山口に入った。足元にはフタリシズカやマムシグサ、周りの木々にはやわらかい若葉が輝いている。
途中、銀晶水、錦晶水と湧き水が2か所あった。コップが置いてあり、冷たく柔らかな自然の水を味わう。湧き水で淹れたお茶が好きなので、 用意してきたペットボトルに詰めて持ち帰り、自宅でも楽しんだ。
中間地点くらいの国師ヶ原では、ちょうどカラマツ林に黄緑色に輝く新芽が出揃ったところ。みんな揃って同じ大きさ、同じ形、 太陽の光を浴びて精一杯背伸びしているようで、斎藤さんが「可愛いねー!」と満面の笑みで振り返った。本当に本当に可愛いの一言。
このとき、私の友人が「葉っぱを見て可愛いというのは女子の特徴ですね」と言っていたのを思い出した。本当にそうなのか皆さんの経験をお聞きしたいところです。
ちなみに、こんな冷静な仮説を立てる友人も女性です。
この辺りから眺望がよくなり、富士山や甲府盆地の東の端が見渡せるようになった。若葉と一緒に太陽もキラキラ、風がそよそよと吹きぬける平坦な場所で、 ここでお昼を食べて昼寝をして下山したくなるくらいの気持ちよさ。 道標に「国師ヶ原(極楽平)」と書いてあったのもうなずける。しかし、それでは本日の目的は当然達成できないわけで、あんな所まで行くのかと信じられない思いで頂上を見上げて更に前進。
いよいよメインイベント会場の岩場エリアに突入した。岩場経験がほとんどないためか、眺望の開けた場所ではちょっとふらついただけでヒヤッとする。 ししかし、そもそもそんな場所でふらついてはいけない。岩場での心構えや体の支え方も今後の課題と知った。
高度感のある岩場に来ると、若い父親と一緒に来た3歳くらいの男の子が登ろうとしてダメだ、とくじけてべそをかいている。 その上では、登りきった6歳くらいのお兄ちゃんが、口笛でも吹きそうなご機嫌な顔で景色を楽しみながら、弟と父親の来るのを待っていた。
弟がくじけたのを見て父が「よし、ここまで!」と宣言すると、今度はお兄ちゃんが「頂上まで行きたいのに!」とべそをかき始め、一人で行ってしまいそうなそぶりを見せる。 それを見て「行くな!行くな!」と慌てる父。大変だなー、と思いつつ、よくここまで来たもんだと感心した。子供もすごいけど、連れてくる父親も肝が据わっている。
更に進むと短いけれどほぼ垂直に見えるクサリ場。こういう場所で何も考えずに取り付くと、どこに置けばいいのか手も足もあちこちに泳いでしまう。 そうだそうだ、先に考えてから登るのだったな、と思い出したけれど、考えるより先に手が出る性分で、あまりスマートな進み方はできないのだった。
頂上へはいきなり着いてしまったような感じだった。狭い頂上は360度の眺望。南アルプスは甲斐駒から白峰三山から南の方まで全体がずいっと見えて、 その先に富士山、反対側は秩父の山が見渡せた。ここで写真を取り合った青年がとても感じがよい人で、藤野さんがシリウスの名刺を片手に早速「営業」開始。 それを横目に斎藤さんと私は、さっさとおにぎりを頬張った。

下り道は別ルートをとり、ひたすら森の中を下りた。傾斜はきつく、道のりは長い。影が少しずつ長くなり、風も強くなってきた。
木々の梢をゴーッと鳴らしながら風が通り過ぎていく。そうだ、私はこんな風の音が大好きだったんだ、と久しぶりに聞いた風の音にハッとしながら森の中を下った。
やっと戻ってきた集落では、古い民家が迎えてくれた。厚い壁、曲がった木材を使った梁、屋根はトタンに覆われているけれど元は分厚く茅などで葺いたのだろう。 どこに行ってもハウスメーカーの建てた同じような家ばかり並ぶ光景を見慣れた私の目には、この集落の風景は本当に味わい深く、取り壊さずにいてほしいなあ、と祈るような気持ちだった。
道筋には「冷たい山の水をどうぞ」と書いた家があり、庭先に入らせてもらって水道をひねり、ありがたくいただいた。体にも心にも沁みる、冷たくおいしい水だった。

帰りの車の中では、藤野さんの乾燥バナナを斎藤さんと二人で食べつくし、駅まで送っていただいた。これで本日の山登りは終了。藤野さん、斎藤さん、ありがとうございました。
乾徳山は、春夏秋冬、季節を変えて何度でも来てみたい味わい深い山だった。
 
乾徳山山頂
 
  水ノタル 下山道の分岐
【コースタイム】
バス停前の駐車場8:45-登山口9:10-銀晶水9:45-錦晶水10:30-35-国師ヶ原10:45-扇平-乾徳山12:15-45-水ノタル13:00-下山道-国師ヶ原14:05-15-道満山15:00-徳和峠-林道15:45

 



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