◆春の常念岳〜健康のバロメーターみたいな行事〜 小川 陽成

          
                    横通岳山頂上から春の常念岳

 私の「お気に入りの山」は、北アルプス・常念岳(2857m)です。ここ毎年4月後半から5月にかけて出かけて
いますが、今年は4月28日〜30日に、弟と一緒に登りました。
 穂高駅から桜を見ながらタクシーに乗ると、前方に白い衣をまとった円錐形の常念岳が見えてきます。今年の
一ノ沢の入り口はどうなのか、昨年は林道が壊れて、路の真ん中に大木がでんと構えていたっけと、来るたび
に想いがめぐります。

 タクシーを降りると登山指導所とトイレがあり、その周辺は、ネコヤナギとフキノトウが咲いている時と、まだつ
ぼみの時があって、毎年異なります。15分ぐらい歩くと、杉の大木がそびえている山の神で、登りの安全祈願
をします。ここから緩やかな歩きやすい笹におおわれた径、澄んだ空気の樹林の中をゆっくりと、王滝に着く。
いつものベンチに腰掛けて大休止。梢越しに常念乗越がちらほら。冷たくおいしい雪どけ水がノドにちょうど良い。
ここから例年残雪がちらほらと、踏み抜きのないようにステップ。開けた笠原沢(沢の十字路=約1700m)に出
ると、常念乗越、常念岳へ続く稜線が雪でまぶしい。雪解けで沢が顔を出したり出さなかったり、毎年異なる変
化が楽しい。お腹をくちくして、いよいよ急登。横通岳への分岐点(2150m)から常念乗越へさらに急登。
乗越(2466m)に出ると、ぱーっと視界が広がり常念小屋を前景に穂高、槍のパノラマで、開放感に浸る。

 今年は弟と2人旅。雪は例年になく大雪(4月中旬に降った雪)でまだ小屋の玄関が見えない。支配人と1年ぶ
りの挨拶、忙しそう。今年は1階の部屋、冷蔵庫の中にいるよう。窓は雪で覆われて真っ暗。暖房の効いた食堂
で、あつい茶をすする。実にうまい。窓越しに槍がまぶしい。テラスからは常念方面、反対方向に横通岳が真っ
白。宿泊者が少ないときは料理も手が込んでいてうまい。天気は最高、明日が楽しみ。

 翌朝、天気の良い時は、近年大天井岳へ出かけるのですが、今年は雪が多いので東天井岳まで行ってみるこ
とにする。登るにつれ雪がしまってアイゼンが気持ちよい。常念岳を眺めるポイントに着くのが楽しみ(約2600m
地点)。航空写真を眺めているようだ。懐が深い山、デジカメでバカバカ撮る。ここに来ると一日ボッとしていたいぐ
らいだ。
 横通岳(2767m)は360度写真の展望台。東天井岳へは今年は冬のルート(尾根通し)、帰りが心配で、無理
をせず横通岳より引返す。小屋に戻り今日中に常念岳へ出かけることにする。小屋では今日も雪かき。支配人が
今年の常念への径はアイゼンが効くので、どこを直登しようが自由との事。頂上は穏やかで、空がややかすみが
ち。槍・穂高他360度の展望。今日は槍・穂が見える2階の部屋に移動、暖かい、ありがたい。

 いつも常念乗越からの下りは十分な時間を取り、来た道を楽しむ。乗越からの急下降、右斜面から常念岳への
雪面と空がまぶしい。1500m位に来ると天気の良いときは雪が腐って足が遊ぶことしばし。山の神で無事下山
報告。登山口からタクシーでシャクナゲ荘へ、汗を流し、そばをたらふく食べて穂高駅へ。
 常念岳へ出かけ始めたのは1980年春からぼちぼちと。毎年登るようになったのは1992年からで、天候の関
係で小屋に1泊して下ったこともありました。のんびり静かな山旅、ぬくもりのある山小屋、木の香り等。今年も登
れた、まだ歩けると自信につながる。健康のバロメーターみたいな行事になってしまったようです。また夏、秋にも
回数を重ねたい山だと思っております。


      「わが山々」目次へ       トップへ