◆ マチュピチュ山に登る  青木 治男
     〜皐月晴れ 風心地よく 天空は碧色〜   

〔日 程〕2008年5月27日〜28日

 南米ではアコンカグア山(6962m)が最高峰であるのは、皆さまも承知のとおりだが、熟年登山者たる私には
とても手に負えそうもない。それでも南米の山を一つくらい登ってみたいと思っていたところ、世界遺産巡りの旅中
でチャンスがめぐってきた。マチュピチュ遺産の南にそびえるマチュピチュ山に登ることである。
 同様の願望をお持ちの方も少なくないのではと勝手に推測して、ツアーの途中、独りで登ったマチュピチュ山へ
の登山行をここに紹介する次第である。

 マチュピチュ山(2940m)は、ユネスコの世界複合遺産に登録されているペルーの国家的遺産であるマチュピ
チュ遺跡の南側に位置している。登山口は遺産の中にあるので、遺産見学のついでに足を伸ばして、登るという
アプローチが一番便利で、合理的である。ただし、日帰りでは時間的に余裕がなく難しいので、麓のアグアス・
カリエンテス村に一泊することをお薦めする。
 ただ、日本を出て登山口までは恐ろしく時間(と費用)が掛かる。成田を出発して9時間余、ロス・アンゼルス空
港で乗り換え、ペルーのリマ空港まで更に8時間近く要する。リマから国内線に乗り換えてて1時間余りでクスコ
に到着。ここからバスで2時間揺られて、オリャンタイポ駅でビスタドーム列車に乗り換え、1時間半ほど走って
アグアス・カリエンテス駅に到着する。更に小型バスで30分、標高400mを登って、やっとマチュピチュ遺跡の入
り口にたどり着く。

 検問所で入場料を払い、入り口を過ぎて左に上がる道を登ると、その頂上近くに、絶好の写真ポイントでもある
高台がある。そこを左折し、インテイプンカへの道を少し行くと、マチュピチュを示す小さな石の標識が右側にある。
ここが登山口である。石段を登ると、石で敷き詰められた道と、石段で作られた幅1m弱の道が続いている。
はじめのうちは勾配もそれほどではなく、道の周囲を覆う樹木が日差しを遮ってくれるので暑さも余り感じないで
登れる。
 高度が増すにつれ、日陰部分も減って、道も急になり、幅も狭まり、石段が増えてくるが、インカ伝統の石組技
術はさすがで、道もしっかりしている。登山道は山の北面にジグザグに付けられていて、太陽をまともにうけるよう
になり、暑さも増してくる。左側が崖になっている狭い道を急登すると展望所らしき石組にでる。やがて、岩を削っ
て作られた人ひとり通れる狭い岩道を通り抜けると、尾根沿いの道に変わる。周囲に草花が茂る中、石段を登っ
て行くと頂上があった。

 登り始めて1時間40分ほど。皐月晴れ、風心地よく、天空は碧色で周辺に雲がたなびく。周囲は山々で囲まれ、
その背後には白く輝くアンデスの高峰が首を覗かして壁色に映える。北側はるか下方にはマチュピチュ遺跡と、
その背後のワイナピチュがまさに箱庭のように収まっている。ワイナピチュの麓をウルバンバ川東から西に半周す
る形で流れている。遺跡は南北に位置する2つの山に囲まれた山頂部分を均(なら)した標高2400mの急峻な
山頂に造られている。人を寄せ付けない要塞としての要素を兼ね備えているのが見て取れ、15世紀にこの遺跡
を造ったインカ人の知恵に改めて感心した。


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