◆カナダ・エスプラナーデ山小屋縦走トレッキング 斎藤光子

  
            針葉樹と岩山                 サンピークを目指して縦走路を行く

出発1ヶ月前「世界一美しい尾根歩き」のキャッチフレーズに心ひかれ、急きょ参加申し込みをして7月18日
〜26日トレッキングに出かけてきました。「エスプラナーデ」?あまり聞きなれない山域でしたが、バンフから
2時間半ゴールデンの北西約60キロにある山脈でコロンビア山群にあり、東にロッキー山脈、西にセルカーク
山脈に挟まれた山域にあります。登山道はなく、入下山はヘリで移動し、縦走路にある3つの山小屋を4泊
5日で縦走しました。

 18日夕刻、成田を出国しバンクーバーで国内線に乗り継ぎカルガリーまで。バンクーバーで関空から来た方
たちと合流し、総勢10名での旅の始まりです。カルガリーでキャンモア在住のツアーリーダー(日本人青年)に
迎えられ、彼の専用車でキャンモアに着いたのが出国と同じ日の18日夜の8時(時差15時間)。
8時とは云え太陽はまだサンサンとふりそそぎ、日本の3時か4時の日差しです。

◎2日目 快晴 キャンモア滞在

 足慣らしで「ジョンストンキャニオン」ハイキング。何百年かけ、けずられたジョンストンクリーク沿い、アッパー滝
と3時間ほどのハイキング。タカネバラ、ゴゼンタチバナが多数

◎3日目 快晴 いよいよエスプラナーデ縦走の始まりです。

  キャンモアのホテルから専用車で牧草地を2時間ほど走り、原っぱ状態のヘリポートへ。7人乗りのヘリが、
3つのロッジへそれぞれ食料、私たちの着替え等を何往復もして運んでくれるので、自分の荷物は最小限で済
み至れりつくせりの贅沢トレッキングです。ヘリポートで今回のスタッフ、ツアーリーダーのアシスタント(バンフ在
住の日本人青年)、食事担当のシェフ、デポラさん(50歳代の女性)、管理担当のカーメンさん(柔道選手のよう
な体格の20歳代女性)が加わり、14名でのトレッキングになります。
 荷物を運び終えると私たちです。注意事項通りに身を低くして待機。初めてのヘリにドキドキ、ワクワク。 景色
もそこそこ5分ほどで最初のサンライズロッジ(2135m)に到着。アッと云う間に別世界に飛び込み、ぼーぜんと
見渡せば、もうそこは花の絨毯。高山植物のオンパレード。遠く、残雪とのコントラストが美しい山々に囲まれ高
揚した気持ちはもうピークです。気がつけば蚊、ブヨ達からも強烈な大歓迎を受け、そうそうにロッジに逃げ込む
始末です。
 3つのロッジはほぼ同じ造りになっていて赤い屋根のロッジ、少し離れてサウナ小屋、もう少し離れて二つのト
イレ。ロッジ内は一つ目のドアーで靴脱ぎ場、次のドアーでキッチンとリビング(大きなテーブルとソファー)、薪ス
トーブ、スタッフの寝室。リビングの大きな窓からの外の景色はまるで額縁に入った絵のようです。
 そこに「ハチドリ」が空中に浮かんだままで、羽をはばたいています。2階は個室が6部屋、(二人用が4部屋、
三人用が2部屋)、きれいな部屋で快適そのもの。今回は10名で使用します。日本の山小屋とは大分イメージ
が違います。各々シーツ、枕カバーを渡され4日間持ち歩きます。サウナも同じで小屋の中は大きな薪ストーブ、
その上に大きなバケツでお湯が沸いて一人洗面器3杯で汗を流す事ができます。
 体格のいいカーメンさんとはいえ、天秤棒で水を運んで下さるので大事に使うことになります。薪割りも彼女の
仕事です。本当にたくましい女の子です。午後からはピンクのノーザンローレル(カルミア属)、ウエスタンアネモ
ネなど咲乱れる中、ゆるい登りの後は、がれ場を20分程登りケルンピーク(2430m)へ。

◎エスプラナーデ2日目 快晴

  サンライズロッジ拠点にアバランチピーク(2430m)、コーンピーク(2400m)、サンピークを一日かけて登頂。
ピークからはコロンビア大氷河、ロッキー山脈と360°の展望。ランチの後は昼寝タイム。すぐ傍では岩場をリス
が駆け回り、マーモットはちらちらとこちらの様子を伺いながら夢中で高山植物のランチを食べています。この素
晴らしい環境の中、寝てなんかいられません。夕食前のひと時、リーダー秘密のグレーシャーリリー(黄色のカタ
クリ)群生地に案内していただき、両サイド樹林に囲まれた広〜いくぼ地、転げ落ちそうな斜面一帯、見渡す限り
の群生地。盛りは過ぎていたものの見事な群生に出会えて感激。

    
               グレーシャー・リリー(カタクリ属)

◎3日目 快晴 メドウロッジへ

  今日はコース最高峰のカポーラマウンテン(2650m)を登頂します。いつもの様にランチのサンドイッチを作り
出発。コルに荷物をデポして、花の群落を避けながら各々好きなように、故意にバラバラになって登るようリーダ
ーからの指示があります。縦走中何度もこのような指示があります。カポーラのピークには2グループに別れ、
1グループごとの登頂になります。グループの前後にリーダーとアシスタントが付き20m程?の岩場のサポート
をしてくれます。無事ピークからの大パノラマにばんざ〜い!湖面に山々を投影するニュウクリアブルーレイク、
マーモット、啼きウサギなどとご対面しながらルンルンと湿原の中に建つメドウロッジに到着。今日のおやつは、
スイカ、エビのディップ、飲み物が用意してありました。

◎4日目 晴れ、薄曇り  ワカビピークを登頂して最後のビスタロッジへ

  今日も花の咲き乱れる中、二つの美しいレイクに見惚れコルに着く頃に後から来たデポラさん、カービンさんに
追いつかれる。私たちがロッジを出たあと部屋、サウナ、トイレの掃除を済ませ次のロッジへ移動するお二人の
あまりの速さにビックリ。一緒に記念撮影。デポラさんたちと別れ、コルにザックをデポしてワカビピークを目指しま
す。ピークはやはり岩稜帯を登ります。雲が多いものの展望も楽しみ、コルでランチをしていると雷、雨、霰。 
稜線で雷にみまわれ、その上何度も現れる雪渓と雪交じりの急下降。緊張しているのか皆もくもくと歩きます。
リーダー曰く、長時間は降りませんよ。と云う通り、小一時間ほどで青空が戻りヤレヤレ。青空が出たところで
丁度みずうみ。気をよくして石投げ等して大休憩。 この大休憩があだとなり、ロッジまであと20分程という所で
またまた大粒の雨になってしまいました。たどり着いたビスタロッジのロケーションは最高。ロッジの前に美しい
ビスタレイク、脇を小川が流れ、三方山々が囲み東にはロッキー山脈。仲間たちとも「わ〜。いいねぇ!!」
午後9時過ぎ、その山々が夕日に染まり思わずカメラを手に外に飛び出し、蚊の大群と戦いながらシャッターを
押し続けました。

◎5日目 快晴 とうとう下山の日がきました。

  ヘリが来るまでの2時間ほど、ロッジの近くシュリスティングレイクへハイキング。最後の最後まで楽しませて
いただきました。そしてヘリのお迎え。10分ほどで5日前飛び立ったヘリポートへ下山。

 この5日間を振り返り、はてしなく雄大なエスプラナーデの大自然の中の展望、お花畑、数々の山上湖、岩稜
帯のピークすべてが私たち10名だけのもったいない程贅沢なトレッキングを体験しました。「カナディアンロッキ
ーの高山植物」という本を出しているリーダーの説明を受けながら、このトレッキング中に出会った花の数は87
種類もありました。

下山後、カナダ最後の夜バンフのホテルで思う存分のシャワーで汗を流しながら誰が言ったのか「世界一美しい
散歩道」のニュージーランド、「世界一美しい尾根歩き」のカナダ・エスプラナーデ、次の 「世界一美しい・・・?」
は? さあ〜何処に行きますか?


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