◆2008年キナバル山(4095m)登山報告  上岡一雄

 2月28日の株主総会で退任し、非常勤になりましたので今回永年の憧れでありましたマレーシアのボルネオ島
サバ州キナバル公園のキナバル山(4095m)登山を実行に移しました。昨年退社された同僚の橋本良聡さんも同
行してくれることになり、最近とんと登っていない当方としては、心強い山行になりました。大学の同級生の永井
彰さんが、コタキナバルの日本総領事に永くお勤めで、彼からも「いいところだから是非」との推奨を受けていまし
て、やっとその約束をかなえられることになりました。短期間の滞在で、充分キナバルの自然の素晴らしさを体験
出来なくて雑駁になりますが、スケジュールにしたがって、ご紹介申し上げます。

 
           ロウズ・ピーク                         ウツボカズラ

◎4月14日 成田発13:30直行便のマレーシア航空MH-081便でコタキナバル空港着18:15。出迎えてくれた現地
  ガイドのKARL(カール)さんと翌日の打ち合わせ後、ホテルに入りました。
◎4月15日 車で約2時間、キナバル公園に向かい、立派な登山管理本部にて登山手続等を済ませました。キナ
  バル公園は、マレーシア初の世界遺産に登録されたこともあり、すべて整然と管理されていることに感心しまし
  た。周辺にはレストラン、宿泊 施設、その他施設が完備されています。我々は、時間的に余裕がありましたの
  で、約1時間ほど離れたポーリン温泉に向かい、第2次世界大戦中に日本軍が掘り当てたという露天温泉の足
  湯と公園内に設置された、地上41mの樹冠上の細いロープの吊り橋を伝わり歩く「キャノピー・ウオーク」といわ
  れる、スリル満点のジャングルトレッキングを楽しみました。その後恒例の激しいスコールのなか、公園本部に
  戻り、周辺の宿泊施設に投宿いたしました。当地は毎日午後からのスコールに注意する必要があります。

◎4月16日 7:00食事、昼食の弁当を受取り、管理事務所(1554m)で登山専門ガイドと合流しました。逞しく、陽
  気なルソン島出身で周辺の村に住んでいるSAIUN(サユーン)さん。ズック靴で身の軽さは呆れるほどです。ガ
  イドと山小屋の予約は、キナバル登山では義務付けられています。宿泊施設の数が限られているため、入山
  者の上限が決められ、それが環境保護にも結びついているようです。日本の北アルプスの山小屋のように一
  枚の布団に三人も寝かせるのとは、大違いです。また、必要ならばポーターを雇うことも出来ます。大部分の
  人達は、荷物はポーターにまかせ、身軽なスタイルで登っていきます。重いザックを持っているのは、我々だけ
  のようでした。また、主峰(Lows Peak)以外への登山、ロッククライミング等は、原則として禁止されており特
  別許可が必要とのことです。現地でわかったことですが、ロッククライミングは中々の人気で豪快なスケールの
  壁があります。
   7:45、Timphon登山ゲート(1866m)に到着。ゲートをくぐりチェックポイントに進みますと、管理事務所で渡さ
  れたIDパスの確認を受けます。頂上までの標高差は約2200m。これだけの標高差は日本にはなかなかあり
  ません。はるかに望む峻険な山頂の遠景を見ますと、本当に登れるのか少々心細くなりました。
   スタートは、下りの階段で小さな滝まで下りそこから延々と続く登り道が始まりました。登山道は幅広く、よ
  く整備されています。木枠、鉄枠、階段等で補強されております。500mごとに距離を示す道標と現在地を示し
  たルートマップの看板が設置されています。風の通らない、うっそうとした熱帯雨林の中を進むので汗がいっせ
  いに噴き出してきます。重そうな荷物を背負ったポーター達が、わきをすいすいと追い抜いていきます。約一時
  間程度歩く毎に、必ず屋根付きのベンチ、水洗トイレ、水飲み場が設置された「シェルター」が現れます。水飲
  み場の大きなタンクには、蛇口が設置されており現地の人達は、口を漱いだりしていますが 「Untreated 
  Water」と書かれていますので我々は遠慮しました。

   途中ガイドは、珍しい熱帯植物を説明してくれます。アイブライト、キナバルバルサ、サイタンドラ、シャクナゲ、
  ミラストラ、ランの仲間、大きなウツボカズラ等見られましたが、世界最大の花といわれる「ラフレシア」は残念
  ながら見られませんでした。きつい登り道と重い荷物と途中の激しいスコールにあえぎながら漸く、3:30 ラバ
  ン・ラタのレストハウス(3272m)に到着。標準時間より若干遅いタイムでした。5:00 buffetシステムの夕食をと
  り我々の宿舎グンティン・ラガタン小屋に移動。各部屋は2段ベッド2台のドーミトリータイプの洒落た建物。共
  同のシャワー、水洗トイレ等も完備されており優秀な山小屋です。日本の山小屋と比べると格段の差。また同
  室は、上品なイギリス人の老夫婦で山慣れた様子で一気に打ち解けました。夕方から激しい降雨で、小屋の
  サイドを爆流が流れ落ちていましたが、深夜には止んだようでした。

◎4月17日 AM2:30 真っ暗な中ヘッドランプを点けて、頂上目指して出発。登山道は、ヘッドランプの列。急勾
  配の階段と梯子が続きます。途中一枚岩の急斜面があり、太いロープにつかまりながら、登ります。足元は
  花崗岩のせいか、よくフリクションがきき滑ることはありません。
   4:00 サヤッ・サヤッ小屋に到着(3688m) IDパスの確認ゲートで、ピークに向かう登山者の往き帰りの確
  認も行っています。このゲートを過ぎると、一面の大岩盤で、樹木はありません。キナバル登山のハイライトで
  す。喘ぎながら登っていくと、巨大な岩峰が左右に現れます。まず右手に2本のロバの耳を連想さすドンキー
  イヤズピーク(4054m)続いてトゥンク・アブホドゥラル・ピーク(3948m)、左手にサウス・ピーク(3921m)、醜い姉
  妹というアグリシスターズ・ピーク(4031m)と巨岩・奇岩が続きます。まったく異様な雰囲気です。更にすすん
  で回り込むと巨岩セント・ジョンズ・ピーク(4090m)が見えてきます。そして最後に目指すLowsPeakロウズ・
  ピーク(4095m)が姿を現します。頂上到着7:00 周囲は断崖絶壁、雲海が眼下にたなびき幽玄の世界です。
  ”孫悟空”の世界のようです。狭い頂上では、感動の瞬間を撮ろうと記念写真の人たちで混んでいます。
  30分ほど堪能したのち、同じルートを下山します。途中サヤッ・サヤッ小屋に立ち寄りIDパスの名前を申告し
  ます。小屋の横の水は、頂上直下から浸み出した水で、ドリンカブルとのことでさっそく蛇口に取りつきました。
  冷たくて、おいしい水でキナバルで初めての自然の水にありつきました。途中ラバン・ラタ・レストハウスに寄り
  休憩。
   10:00〜11:00遅い朝食後、登山口目指して出発。これでもかというきつい階段状の下山道はなかなか手強
  く、膝が悲鳴を上げます。思った以上に時間がかかり、登山ゲートに到着したのが4:00。管理本部でガイドから
  感激の「キナバル山の登頂証明書」受け取りました。その後、車でコタキナバル市内まで移動。
   18:00市内のホテルに投宿。翌日の帰国の飛行機は、午後0:50発とのことで、ゆっくり休むことができました。

◎4月18日 朝食後ホテルの周りの美しいビーチを散策して帰国の途に着きました。ぜひ皆さま方も、前マハティ
  ール首相の指導のもと、アジアで一番安定して逞しく成長している活気のある国情と、美しい自然をお楽しみい
  ただくことに加えて、旧日本軍の占領地ながらフレンドリーな人情に接する体験をされますことをおすすめいたし
  ます。


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