【ゴーキョピーク・トレッキング】

名倉 登美枝

■あこがれのネパール

「ルクラ・・・ルクラ・・・」そっと口ずさんでみる。あんなに憧れていたルクラに着いた。ガランコロンとカウベルを鳴らしながらヤクが通る。可愛いような恐いような。背負っている荷物が大きい。「頑張れ!!」と声を掛けたくなる。 さあ、トレッキングが始まる。厳しく教えていただいた歩行方法と呼吸方法を、ここから一歩づつ始める。「紫外線が強いから、サングラスをしなさい」と助言してくれた友人の教えを守って、いつもサングラスをしていよう。 「水をたっぷり飲みなさい。1日1〜2リットル、水の中にも酸素があるよ」。高山病になるのが恐いので、高度計を見ることができない。富士山よりも低い所で高山病になりたくない。富士山の高さを越えたら高度計を見よう。下って来る日本人達に聞くと、4000m辺りで高山病になってしまうようだ。そこまでは登りたい。

ネパールを歩いている嬉しさで涙がやたらと出てくる。ゴーキョまで毎朝歩き始めるとグッ!!と胸が詰まって涙が出てきた。 「今日も歩くことができる・・・。うれしい・・・。」赤くなった目をサングラスで隠して歩こう。 ルクラから初めての夜、猪瀬さんの古稀のお祝いパーティーが開かれた。ワインの赤、白、シャンパンで乾杯!! 焼きたてのケーキに大きな?燭を立て、猪瀬さんはネパールの帽子を贈られて、まるでネパールの王様みたい。食後マードルで音楽と踊りを楽しむ。私の緊張した気持ちがほぐれてくる。夜は2度トイレに行った。何度でもトイレに行った方が良いと聞き安心する。

朝、すぐにミルクティーが運ばれてきた。とてもおいしい。小ぶりの洗面器にお湯を入れてくれたので洗顔と、ついでに全身も。 ポーターの方達はよく働く。クムジュンでは夜中にトイレから戻って寝袋に入ると息切れがする。空気が薄くなっているのだ。 4000m、ドーレのロッジに着いた。今日のコースは長かった。3900mを越えてから風が冷たくなった。雨具を着たけれどお腹 が冷えて痛い。この後、下痢と嘔吐で食事はできず、ただ寝てい たい。ロッジではストーブに火はついていない。とても寒い。顔が赤く熱が出てしまった。次の日の朝は動けない。でも登りたい。

やっとの思いで朝食を背筋を伸ばして流し込む。登りたい・・・。 何とかゴーキョの村まで着いた。明日の用意をする。雪が積もっているのでアイゼン持参とのこと。しまった!! アイゼンを靴に合わせていない!!。考えの纏まらない頭でアイゼンを合わせることができない。泣きたい気持ちで大塚さんにお願いしたところ、快く直して下さった。「こういうことはネ、事前に合わせておかなくてはネ」とやさしく諭していただきながら。ありがとうございます。

いよいよ出発の朝。4:30発。川崎さんの牛歩が始まる。もし高山病になってフラフラ歩くと危ないので、ストックを2本初めから使う。バランスを取りながら膝を上げ、ソッーと足を降ろす。後ろから「足が上がっていて、良い歩き方だよ!!」と声を掛けて頂く。とてもうれしい。頭痛がしてきた。深呼吸を何度も繰り返すと頭痛が消える。3回ほど頭痛が襲ってきた。その度に深呼吸をする。 エベレストが高くそびえてくる。私達の高度が上がれば、それだけエベレストも高くなる。世界一の山が私に迫ってくる。

とうとうゴーキョ・ピークに着いた!!。頂上にはたくさんの人たちがいて周りの山々を嬉しそうな顔をして眺めている。皆、笑顔だ。それを見ている私も笑顔。たくさんの旗に囲まれて、いつまでも頂上に停まっていたいが、下る時がすぐに来てしまった。 ゴーキョ・ピーク、ありがとう!!
下っている途中に、酒井さん、中川さんと稲村さんが登って来た。感動で女性二人をギュッと抱きしめた。「登ったよ!! 登ったよ!!」。

この登山の中で感じ取った事がたくさんありました。初めて行動を共にした方達にも快く受け入れていただきました。高山病対策も教えていただいたり、あたりまえの事がなかなかできない環境の中にいて、皆がリーダー・サブリーダーの指示に従っていたことがとても心に残っています。素晴らしい人達の中にいて、とても幸せな山行をさせていただきました。おいしい梅干しと共に。

 


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