◆2008「安全登山講習会」報告−山ではセルフレスキューが基本−

          
                    (講師陣の埼玉県警山岳救助隊の皆さんと)

 〔日程〕 2008年9月27日(土)
 〔場所〕 秩父・二子山 (横瀬)
 〔参加者〕 杉坂千賀子(チーフリーダー)、A班:秋田勳男(パーティー・リーダー)、斎藤幸子(サブリーダー)、
         猪瀬精孝、藤野孝人、古林 宏、中道 宏。  B班:河内達人(パーティー・リーダー)、
         上岡一雄(サブリーダー)、北村 順、斎藤光子、別所宗郎、橋本良聡(ゲスト)=以上13名        
 〔報告者〕 杉坂千賀子、斎藤幸子、河内達人

 ◎チーフリーダー報告:杉坂千賀子

 埼玉県警山岳救助隊の安全登山講習会を受けることは、私のかねてからの悲願だった。そのユニークな内容
は「山と渓谷」の記事にも数年前に取り上げられ、その時から自分の安全登山に対する知識などの腕試し?
として受けてみたいなあ・・とずっと思っていたものだった。今回、シリウスの安全登山担当ということになり「これ
はチャンス!」。会のためにも、自分のためにも良い機会となると思って県警に講習会開催を申し込んだ。

 果たしてその内容は・・。受講生13名に講師が7名という贅沢な割合。救助隊の皆さんはハーネス、ヘルメット
を持参のやる気満々があふれでる出で立ちで、受講生にも気合が入る。講習場所の二子山は駅からも近いが、
なかなか侮れない場所で、岩場あり、足場の悪い箇所もあり講習にはぴったりだった。本来は山座同定なども
予定されていたようだが、ほとんどの受講生の地図に磁北線が入っているのをみて割愛されたようである。
何よりも熱意がすごい。私はB班だったが、講師主任が率先して谷側に駆け下りて、事故者の救出作業を身を
もってシミュレートされる姿には瞠目させられた。

 また、下山時の休憩時には、隊員の実際の遭難現場の悲惨さを体験談として話されるなど、興味を引く内容
が紹介され「遭難はいけない」と思わせるに十分の効果があった。警察の方々のお話をじきじきに伺う機会など
はなかなかあるものではないし、真にせまった話を直接聞くということは、どんな本を読むよりも心に沁み入るも
のだった。その中で隊員の方が、「山は危険がつきものだ。自分が山に出かける時もそうだが、捜索に出る時も
必ず子供の顔をみてから出かけるんです」との言葉には胸をつかれた。ひとたび遭難となれば警察の方々は危
険を承知で捜索に出掛けられるということであり、このことは決して忘れてはならない。

 飯田主任のお言葉で心に残った言葉がある。「救助要請はしてもらってもいい。でも30人もパーティメンバー
がいるのに、誰も何もしないで事故者をほっておいて、自分たちはさっさと下山してしまうような状況は作らない
で欲しい。5m、10mでもいいから、自分たちの力で何かをしようという気持ちをもって欲しい。山ではセルフレス
キューが基本なのです」と、その通りだと思う。「自己責任で山へ行っています」と言うことは簡単だ。だけれども
その自己責任とはなにか、何をどこまでやるのか、やれるのか、責任をとる、とはどういうことなのか、考えさせ
られる言葉だった。

 今回の講習では会の遭難対策担当として、今後どのようなことが必要なのかを考えさせられるものだった。
救急法はもとより、全般的な知識、搬送などの方法も研修していく必要を感じた。貴重なお時間を割いて講習を
してくださった埼玉県警察山岳救助隊の方々には本当に感謝したい。山は楽しい、でもそれだけではない、
ということを改めて考えさせられた貴重な1日だった。

 ◎A班サブリーダー報告: 斎藤幸子

  西武秩父線・芦ケ久保駅に集合、近くの道の駅で基礎講習を受けた後、A班B班に分かれて実践です。
A班は近くの川を渡り、鳥居→神社→雌岳→雄岳→雌岳→水場→丸太橋→道の駅の一周コースです。歩き出
してまず登山口の確認です。リーダー独りに任せるのではなく、地図を見、目標を確認します。山に登る時は、
個々にどういう山を、どういうコースで歩くのかを事前に調べておくことが必要であることを教わりました。登山道
に入るとつづら折りの道が続きます。今どういう位置にいるかを地図で確かめ、シルバーコンパスを当て更に確
認をします。

 1時間くらい歩いた所で、足がつった者がでました。さてどのように対処するか?です。まず、足をつった箇所を
のばし、もみほぐし、水を飲ませます。本人に歩けるかどうか確認し、歩ける時はそのまま続行します。無理な時
は勇気ある撤退をします。ケガなどで歩けない時は救助を要請します。仲間同士でできるようであれば、ケガ人
を救助しやすい場所まで運び救援を待ちます。救助をお願いする時は現在いる場所をできるだけ詳しく伝えます。
 大きな岩場に出るとロープを張って下り、更に進むと雄岳に到着、ここでA、B両班が合流しました。昼食と休憩
を取り、下山が始まります。急斜面の滑りやすいルートがしばらく続くと、沢すじの道に出ます。こういう所で道に
迷った時に沢を下る人が多いが、川は突然滝になったり、両側が切り立った谷に入り込み進めなくなることが多
い。谷は発見することも難しくなるので、道に迷った時はまず戻ること、上に登り尾根に出るようにすることを教わ
りました。
 最後に仲間が転落した場合のセルフレスキューの方法を実践しました。まず声を掛け、ケガの状況を聞いてか
ら、下りて行けるようだったらロープを使って下り、ケガ人をサポートして引き上げます。実際にロープを使った引
き上げ作業を見せていただき、1/3の労力で引き上げる方法があることを知りましたが、ロープワークの仕組み
が良く分かりませんでした。私たちの班の人が持っていたロープを見て、これだけの物が用意してあれば問題は
ないと言われました。

 全員が道の駅に戻り、隊長さんから「今までに行った講習会の中では、皆さんの会が装備や技量が一番整っ
ていた」とお褒めの言葉をいただきました。
 今回の講習会で教えていただいたことを忘れずに、これからの山行に生かし、楽しく無事に山登りができるよう
にしたいと思います。またこのような機会がありましたら是非参加したいのでよろしくお願いします。この講習会を
早くから企画して下さった杉坂さんに感謝致します。有難うございました。

 ◎B班リーダー報告 :河内 達人

 9月27日(土)、西武沿線の芦ヶ久保駅に近い二子山で行われた埼玉県警山岳救助隊の方々による「安全登
山講習会」に参加した。先ずは駅近くの道の駅にて救助隊による持ち物チェック。地図・コンパス・雨具・非常食・
着替え・ヘッドランプ…。全員OK、地図に磁北線を入れておいてよかった。次いで質問、今日の日の出・日の入
りの時刻は? これには全員答えられない。救助隊員曰く、日の入りの時刻を正確に認識する事は重要、殊にこ
れからのつるべ落しの季節には思いのほか日没が早く道迷い・遭難の一因ともなるのでリーダーたるものはしっ
かり把握しておくこと。ご尤も。

 その時突然、隊員の携帯に救助要請あり。皆さんこちらへ、と言われるままに表に出る。「ここから見える範囲
に遭難者が居ます。何処にいるか捜してください」。ここではじめて実習である事に気付く。周りを見回すが特に
異常は見当たらない。よくよく目を凝らしてみれば北北西の方向約1km、大仏像の横で手を振る隊員が豆粒より
小さく見える。見通しの良い場所であるが、言われてみないと到底分らない。手を振るほか、ストックや合羽、レス
キューシート等を振って見せてくれる。レスキューシートが一番分かりやすい。

 道の駅での講義に続き二子山での実習、参加者は2つの班に分かれて登山開始。何故か小生はパーティ・
リーダーに。「ハイッ、リーダーさん出発」。言われるままに地図を見ながら歩き始めると、「歩きながら地図を見て
はダメッ!地図を見る時は完全に止まってから」とのご注意。線路を潜り二子山頂上を目指す。途中、シングル
ストックの時は山側につくこと、丸木橋を渡る時リーダーは一人ずつ注意して渡るよう指示すべきこと、時々後ろを
振り返りメンバーに声を掛けること等、実践的な事柄を習う。

 「ラクセキ〜!!!」突然頭上から叫び声。待ってました!? ザックで頭を護る姿勢でうずくまる。テレビで見た
落石時の対応方法が役立つ。救助隊員の1人が何気なく先に行ったのを見ていたリーダーの役得で対処できた
が、実際に遭遇した時はどうかな…と思いながら他のメンバーを見ると、それぞれが崖に身を寄せるなどの防護
態勢を取っていた。さすがシリウス、お見事です。道が九十九折の場合は落石に注意とのお話に実感がこもる。
 ビバーグを想定して火をおこす訓練も行った。火つけ用に牛乳パックを乾燥して持ってきていたのは杉坂さん、
流石です。救助隊委員の方はそのパックをシュレッドしていたが、嵩張るが火付きが良いとのこと。遭難時には
ヘッドランプとラジオそれに火があれば、大いに役立つとのこと。

 分かれたA班と大声で連絡し合う。笛も使ったが、意外とよく聞こえるのは人の声だ。一番良い、と教わっていた
ホイッスルは聞き取りにくい。ただ笛は人の声と違い長時間楽に音が出せるので是非持参すべきである。
上にあげた以外にも、動けなくなった人の空ザックを使っての背負い方や、崖を滑り落ちた人の引き上げ方、雷雨
時の対応、登山計画書提出の意義等など多くのことを学んだ。これをきっかけに学ぶ姿勢を忘れず、学んだ事を
遭難予防に役立てたい。今回の講習会は、企画から折衝まで杉坂さんのご尽力により実現したものです。
本当に有難うございました。


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