■2008年度「山の救急法」研修会報告(5回シリーズ)

      第1回報告   第2回報告  第3回報告  第4回報告  第5回報告

 ◆第1回(2008年11月25日)

   ◎内容=救急法概論、出血のコントロール、包帯法(三角巾を中心として)
   ◎インストラクター=杉坂会員
   ◎参加者=名倉、斎藤(光)、秋田、萩原、上岡、赤澤、北村、古林、小川、服部、福寿、浅野、
           別所、玄(山楽会)、折川(会員外)
    【研修内容 】
     (1)救急法概論 @カーラーの救命曲線、救命の連鎖、A個人装備として最低限の処置ができる
        「救急パック」の持参、Bアクシデントが発生したら冷静に(SETUP)、
       C
受傷機転の予測、C手当ての優先順位、D意識レベルの確認とABC評価、
        E水分摂取や薬使用の可否
     (2)出血のコントロール @ケガの程度の確認、A直接圧迫法、Bショックへの対処
     (3)包帯法 包帯、保護ガーゼ、三角巾の使用について
     (4) 三角巾の使用法 折り方・結び方・解き方、顔・頭、耳、腕、手、膝・肘
     (5)緊急連絡シート           

 ◆第2回(12月11日)

        
             (三角巾を使った前腕骨折の応急処置)

   ◎内容=骨折、捻挫、打撲の処置、
   ◎インストラクター=杉坂会員
   ◎参加者=西田、名倉、斎藤(光)、堀内、藤野、上岡、赤澤、北村、古林、小川、大塚、服部、
           斎藤(幸)、浅野、柿沼、別所
    【研修内容】
     骨折の処置、捻挫の処置、足のつり、膝の痛み、打撲、骨折の手当てと固定法(前腕、下腿、
     鎖骨)

 ◆第3回(2009年1月8日)

   ◎内容=高所障害、低体温症、凍傷
   ◎インストラクター=大塚
   ◎参加者=杉坂、西田、中道、柳谷、斎藤(光)、堀内、秋田、藤野、萩原、上岡、北村、古林、
          小川、服部、福寿、浅野、柿沼、別所、坂井、岡田
    【研修内容】主に海外登山での高所障害発症のメカニズムと予防法・応急処置法、
            低体温症・凍傷の予防と応急処置
     使用テキストはこちら

 ◆第4回(2009年2月9日)


        
             CPR(心肺蘇生)

  ◎内容=@暑熱障害・熱傷 ACPRとAED
  ◎インストラクター=杉坂会員
  ◎参加者=西田、中道、斎藤(光)、斎藤(幸)、堀内、秋田、藤野、小川、北村、大塚、服部、
         浅野、柿沼、別所、岡田、川崎
   【研修内容】 暑熱障害(熱痙攣、熱失神、熱疲労、熱射病)の予防と応急処置、熱傷の応急処置。
           一次救命処置の手順、CPR(心肺蘇生)の方法、AEDの使い方 。

    使用テキストはこちら

   ●受講者の報告(第1〜4回の感想)  小川陽成

      夕食後ほっとして、ボーッとしながらテレビ。ニュース、天気予報、そして21時ごろ就寝(老化
     現象か)の日々。山に関連した研修会で、19時〜21時まで居眠りせず持つか心配しながら参
     加しました。
     ▼三角巾の使い方
      出血した時は傷口は洗わないで、ガーゼ等を積み重ねていく。三角巾はその使い方を、講師
       の実技を見ながら実際にやってみる。折りたたみ方もみよう見まね。うまく出来ないもどかしさ。
       これはかなり回数を重ねないと、事を運ぶに至らないと感じた。
     ▼骨折とねんざ
       骨折をしたらほとんど自己完決は無理。通りがかりの人の応援、救急を頼む。でも携帯電話
        の電波が届かないときはどうする。なるべく骨折をしないよう予防しよう。講師がストックを松
        葉杖に変身させた、身近なものの応用。手際がよい。足首のねんざでは、靴を履いたまま
        三角巾を使っての部位の固定(バンダナ等でもよい)など結構利用法があるものと感心した。
     ▼高山病
      高山病では高度が増すごとに気圧が下がるので障害が出やすい事。頭痛、吐き気、食欲不振 、
       悪心、手のむくみ 他。自分も山中で体験したことがある。自覚症状が出やすいので対処しやす
       いのではないだろうか。行動での無理は禁物と思った。
     ▼CPR
      CRP(心肺蘇生)は人形モデルを使って講師が蘇生を実施。息をしているか、あごをあげ、鼻を
       つまみ人工呼吸2回(省略可能だそうだ)。そしてみぞおちの上あたりに手を合わせ30回垂直
       に押す。そのときカチッと音がする。しなければ効果なしとの事(本番は音はない)。その間に
       AED(自動体外式除細動器)が入手できたら切り替える。呼吸回復を確認しながら救急車(隊)
       が到着するまで交代でCPRやAEDでの処置を継続する。各人実技。呼吸の確認、胸骨圧迫
       30回、かなりの力を要す。これで100回出来るかどうか、とにかく応援がくるまで続けなければ
       ならないのだ。交代で蘇生実技。本番さながら○○さんどうしました、人工呼吸で鼻をつままな
       いでやり、参加者の笑い。とにかく1人では負担が多いという事が理解できた。
     ▼AED
      AED(除細動器)の使い方。これも講師が模型機器を使って手本を見せる。電源を入れれば機
      器が、手順をアナウンス、指示に従えばよいそうだ。電極パッドは左右斜め対角線様に貼付しな
      いと効果なしとのこと。又金属類は本体から離し、付き添いは離れてからスイッチ、の注意があっ
      た。ショック後回復がなければ、心肺蘇生の繰り返し、機器が心電図の解析を音声で知らせるま
      で続けるとの事。参加者も実地体験。手順は簡単、機器の指示に従えばよい。各人パットの貼り
      方を実技。駅などでAED機器の設置は見かけるが、山での使用は救急がきてからか。そのうち
      身近なものになるだろうと思った。
     ▼4回目まで終えて
      事故が起きたら、自己解決出来る事柄は少ないと思った。日常生活でメンテナンス出来るものは
      心がけ、その知識は知っておいた方がリスク回避につながると思っている。
      研修を通して講師の実技用具他の準備、また身振り手振りの講義に、眠気をもようす暇もなく受
      講できました。感謝。

◆第5回(2009年3月5日)

 

  ◎内容=搬送法、救助要請
  ◎インストラクター=杉坂千賀子会員、藤江さん(都岳連・遭対委員)
  ◎参加者=西田、中道、柳谷、堀内、秋田、藤野、上岡、赤澤、北村、古林、小川、大塚、服部、
          福寿、斎藤(幸)、浅野、柿沼、別所、坂井
   【研修内容】搬送法=搬送の流れ、雨具を使用した搬送法、ザックを使用した搬送法、
                シュリンゲを使用した搬送法、ドラッグ法、ヒューマンチェーン
          救助要請=緊急連絡カード、エアーレスキュー、携帯電話使用上の注意

  ●第5回 「搬送法」  受講者の報告  柿沼裕子
     〜方法を知っていれば女性だけでも・・・〜 

 3月5日に行なわれた山の救急法「搬送法」に参加させていただきました。研修会の数日前「実際に自分の
持ち物で作ってみたい方は参考にしてお持ち下さい」、と搬送法で使用する道具が明記された案内メールを
講師の杉坂さんからいただきました。通勤姿でザック背負って出社するのは無理と、一度は諦めましたが、
せっかく実際に自分の持ち物を使って学べるチャンスだからと、ザックを駅のロッカーにいったん預けることで、
当日持参することができました。
 当日は下記を参考に準備し、実際に使用しました。
(1) 普段使用しているザック、(2)雨具(結んだりひっぱったりするので新しいものより古いものほうがよい)、
(3)スリング 60cm、120cmなど、(4)ストック、(5)銀マットEテーピングテープ。

 最初に、搬送についての基本的な考え方の説明がありました。搬送の目的は、負傷や疾病の状態を悪化
させずに医療機関へ運ぶことであり、十分な手当て・安静・スピードが大切であるということです。今回、机上
は僅かな時間で、直ぐに机を片付けて実演に入りました。まずは講師お2人による実演と、そのあとでアドバ
イスを受けながら自分達でも実際に行なってみました。

【ドラッグ法】傷病者の足を重ね(摩擦を少なくするため)、両脇の下から手を入れて傷病者の前腕を掴む。
傷病者の臀部を床から引き上げるように引っ張る。
【背負い法】                       
a. テープスリング使用…長めのテープスリングを利用して傷病者を背負う方法。搬送者の肩部にクッション用
  のあて布を当てたり、短いスリングを使い傷病者を背負っているスリングを胸の前で引き寄せるようにすると
  安定する。
b. 雨具使用…雨具の上下をシートベントで連結させ、右腕部分と右足部分、左腕部分と左足部分、それぞれ
  を結び、できた輪の中に傷病者の足を入れ臀部から腰上までを包み込むようにして背負う
c. 支持法…スリング等を使い2人で行なう搬送法。搬送者は傷病者を挟み、傷病者側の手は傷病者の背中
  を支え、他方の手は、小さく輪にした1本のスリングを一緒に掴み、傷病者の膝の後ろに回す。手首を握り
  合う方法よりも安定し、重さに耐えられる。
d. ヒューマンチェーン法…仰向けの傷病者を両脇から抱えて搬送する方法。ただし最低3人の搬送者が必要。
  傷病者を持ち上げる手は、互いの手首を掴みあう。頭の固定も重要。
e. ザック搬送…空にしたザックと雨具を連結させて背負子(しょいこ)のように背負う方法。さらに銀マットを巻き、
  テーピングテープで固定したストックに傷病者を座らせる格好にすれば、楽な姿勢で搬送できる。ザックの
  大きさは40L以上のものがよい。もうひとつの方法は、ザック3個を連結して担架をつくる方法。ザックの背が
  クッション代わりになる。

 感想としては、背負い搬送する際に、傷病者を背負ったりする体制になるまでがとても大変で、人数が確保
されていればどうにかなるけれど、一人の時は非常に厳しいと思いました。また雨具やザックを使った搬送法
では、どうしても思ったような形にならず、講師の方にお手本をみせてもらいましたが、連結箇所をかなり強く
引っ張って根元でしっかり結んでありました。「搬送中に結び目が緩んできても、途中で直すのは大変。そうな
らないよう最初からしっかり根元で結ぶように」、と講師からアドバイス。今まで形だけで覚えようとしていたけ
れど、傷病者の体重がかかることを考慮せず、形だけ作っても実際に使えなくては用をなさないと実感しまし
た。また自在な位置で締め易く、荷重がかかってもほどき易いシートベントは搬送法での必要アイテム。応用
範囲が広いので確実に覚えたいと思います。  
            
 今回は、自分の持ち物を使ってやってみましたが、夢中になりすぎて模範実演の見落としや、説明の聞き
漏れが多分にあったように思います。実際に自分でやってみたことで改善すべき点が分かったことは大きな
収穫でしたが、その辺りが反省点でもありました。
 今回、講師の杉坂さんと同じ都岳連・遭難対策委員である藤江さんがお手伝いに来て、お2人で指導に当
たってくださいました。搬送は非力な女性だけでは厳しいのではと、多少なりともそんな意識を持っていたの
ですが、お2人が実演する姿をみて、また実際に自分達でもやってみて、方法を知っていれば持っている山
道具を利用して、少なくとも緊急避難は何とかできるのではないかと思いました。
  ご指導いただき、ありがとうございました。


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