■「沢登り中級」シリーズ研修会（09年５月〜10月）報告

◆研修会を終えて　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西山　常芳

実施日：
１回目／小川谷廊下、2回目／笛吹川、東沢、鶏冠谷、３回目／和名倉沢、
４回目／ナルミズ沢、５回目／鈴ケ沢東俣―中止、　　６回目／東沢、釜の沢西俣

参加者：累計27名(うち当会10名)
　　太田英雄、柿沼裕子、川�ｱ義文、西山常芳（シリウス）
　　伊藤綾子、内田弘子、玄ニ洋、下紀子、長岡和義、三枝謙治（山楽会）
　　荻原美代子（ユーマック）

本年度の沢登り、中級者向け研修会も無事、事故もなく終了できましたことを報告いたします。新緑の頃から紅葉の時期までご満足いただけた沢シリーズだったと思います。１回目よりすべてビバークつき遡行で、テン場での焚き火も３回ほど、沢ならではの技術を今後の山行に多いに活用して下さい。
加された方々ですが、リードもできるような方も多く、本当に、楽なリーダーをさせていただきました。車両提供者、食担、サブリーダー、いろいろとお世話になりました。来季も、この指止まれで再会しますので、よろしく。
　来年度の初草鞋は１月１７日（日）大山沢（中級向け）を予定しております。

◆笛吹川・東沢・釜の沢・西俣・右沢（甲武信岳）遡行　　　　　川崎 義文

10月10日　三富・道の駅の庇を借りてビバーク、仮眠する。寒い。この日、甲武信岳稜線で降雪があったという。数日前に台風が襲来し、沢筋が大荒れで、水嵩も増し、更にこの寒さだ、明日からの遡行が思いやられる。
10月11日　ビバーク撤収後、08：00西沢渓谷駐車場発。水流を避けて笛吹川右岸を辿り、鶏冠谷出合に到る。沢用具を装着し、早速膝下までの水流を数度渡渉する。意外と冷たくない。山の神10：15〜10：25、釜の沢出合12：25〜12：35、両門の滝14：00〜14：10に到る。ここまでは沢登り・バリエーションコースではなく、古い地図では登山道として実線で記されている。いまはほとんど手入れがされていなく、新しい地図では点線または径として全く記載されていない。コースには数ヶ所、朽ちた案内板がぶら下がっており、昔登山道であった名残を留めている。
両門の滝・左滝の泥壁を登り、西俣に入ると、直ぐに深い淵を持った３ｍ壁に阻まれる。2,3mをへつり、2,3度失敗して壁から淵にドボン！を覚悟すれば登れる壁である。ところが誰も全身をずぶ濡れになりたがらない。ロープを出して10ｍほど泥壁を直登し、約30ｍヤバイ不安定なトラバースで高巻きした。夏ならロープなしで、数分で乗っ越しできただろう。もちろんドボン・泳ぎをも強いられたことであろうが・・・。
西俣も随所にキャンプ適地がある。15：30　大型タープ、テント、ツエルトを張り、盛大な焚火と豪華な夕食を楽しんだ。焚火で身体の芯まで温まったせいか、昨夜の下界でのビバークよりも寒さを感じなかった。
　10月12日7：35出発。大量の食材・ビール・酒類が減ったので身が軽い。快調に遡行する。二俣09：25、右沢のナメ9：40、多段10ｍ曲がり滝10：05、倒木帯10：15、ここから水流を離れたのだが意外と時間がかかり、水師（2396ｍ）11：45着。沢装備を解き
12：25発、甲武信岳・甲武信小屋・徳ちゃん新道を経て西沢渓谷駐車場17：00着。
　沢登りは夏季に、とは限らない。涼しければ涼しいなりに、寒ければ寒いなりに楽しむ方法があるものだ。今回はなるべく濡れぬように・・・最深で膝上チョットまでで、飛沫を浴びる以外には、上半身が濡らすことはなかった。そして、高巻き・大高巻きの怖さ・難しさ、そしてその楽しさを味わった。　来季はこの沢の水流を忠実に辿ってみようか！

◆奥利根・宝川・ナルミズ沢実施記　　　　　　　　　　　　　　　　　西山　常芳

　昭和４０年代はスキー列車以外、停車しなかった土合へ行くのに湯檜曽駅で降りて、約５〜６キロ、だらだら坂の清水街道を歩いて行くと、最初に谷川岳の二つの耳が、土合に近づくと鋭い峰を持った形の良い武能岳も見えてきます。山に入りこんだ新鮮な喜びを味わえる気持ちの良い道だと、深田久弥がなにかの本に書いています。往時のように、湯檜曽駅から歩く人は見かけませんでしたが、今回のスタート地点に三々五々集まったのは６名、明日からの打ち合わせも兼ね駅舎内にて前夜祭となった次第です。
　２２日、快晴、奥利根ゆけむり街道を宝川温泉へ目差し、林道ゲートまで約５０分のドライブ、ゲート前の月岡邸の親父さんに挨拶し、いろいろと山の情報を仕入れ、アドバイスを受けました。
　本日は徒渉点から入渓し、ウツボギ沢を経て大石沢出会いでビバーク予定なので気が楽。アプローチの林道はオオハンゴンソウの花が満開、ブナ、ナナカマド、ウラジロモミ、シオジ、沢ぐるみなどの木々と渓谷美を探勝しながらの遡行となりました。途中２人組の男女の１人が足を包帯しているのでわけを聞くと、ハチにさされて、腫れているらしい、早速メンバーの看護士が治療してあげたけれど、大丈夫だったのだろうか。地蜂の巣が登山道の真中にあり、むやみにストックなどを突くと攻撃されます。静かに歩くことが災難に遭わない秘訣です。
　途中釣りなどしながら（全く釣れず）、のんびり、まったりと遡行し、最後はテン場の品定めで、最良の所を獲得、幕営の手際もグッド、１５時には「お疲れさまー、かんぱーい」と相成りました。夕まづめに再度、釣りに挑戦、なんとか骨酒にできる岩魚をゲット、担ぎ上げた2リットルの日本酒が役に立ちました。よそのパーテーにもお裾分けで大変喜ばれましたが、食当、女性3人もすごい。シェフ3人が作るものを次から次へと食べ消灯の9時まで、メタボ街道まっしぐら。明日の英気を取り戻した一夜でした。
23日（日）今日も快晴。本日の遡行行程は下山までがもっとも長い。そのために不用な荷物は全てデポし、日帰り装備での遡行となりました。8ﾒｰﾄﾙ魚止滝手前から大烏帽子山が見え、二俣から右俣に入れば笹の草原が彼方に広がっています。「天国への階段のような」と言う表現がぴったりしている感じです。これと言った悪場もなくすばらしい源頭の雰囲気が漂う美しい沢でした。
　ジャンクションピークからは朝日ヶ原の池塘を眺めながらの稜線漫歩、朝日岳（1945m）で、至仏、武尊、谷川の景観をバックにビールと骨酒の残りで乾杯、景色も良いが酒がうまかったー。朝日岳から大石沢への登山道を下山し、またデポ地点で休憩後林道ゲートまで暑い、暑いと言いながら下山し、車両デポ地点で全員と握手、握手。無事遡行終了となった次第です。
いわゆる名渓と言われる沢を中級沢シリーズとして企画、今回が第4回目になります。参加された方々には充分満足されたことと思います。次回の企画もお楽しみに。遡行技術など総合的には皆さんに教えることは何もないですが、次世代に向け新しい力となり会を背負ってくれる若い年代の参加も望まれるところです。