日程: 2013年4月13日(土)~14日(日)
メンバー: 藤野(L)、石川、加藤
報告: 加藤

 

   

 

 2月の阿弥陀北稜も同じメンバーであった。あの時も翌日は赤岳主稜の予定だったが悪天候で断念した。あれ以来2ヶ月ぶりの登山とあって、週末が近づくにつれそわそわしてどうにも落ち着かない。そのくせ準備は追い詰められないと中々進まない質なんで、結局前日の夜にバタバタ支度する始末。当日の朝も早く起きてチェックしながらパッキングするのだが、あれもこれも詰めたり出したりでなかなか決まらず、ギリギリまで取捨選択していざ家を出ると、現地で何かしら忘れてることに気付く。まあ、登攀に必要な道具などは洩れなく持ってきてるからまあいいか。さて、西八王子駅前で藤野さん、石川さんと合流し、いざ出発。高速に乗って笹子トンネルを抜けると、悠然と聳える南アルプスを目にしてテンションが上がる。中でも一際凛々しい甲斐駒ヶ岳。いつか黒戸尾根から登頂できればと考えながら眺めていると、視界に八ヶ岳連峰が飛び込んでくる。今日はあそこで呑めるのかと考えながら、車はどんどん山に近づいていく。美濃戸口に着くと雪は無く、赤岳山荘まで車で行けそうだったので、慎重に運転しながら悪路を行くと、駐車場には既にたくさんの車。外に出て身体を伸ばす。本当に気持ち良い天気だ。赤岳鉱泉に着く頃には汗だくになってるだろう。薄着にして体温調節しながら快調に歩を進める。2月に来た時より荷が軽いせいか、殆ど夏道を歩くようなペースでグイグイ歩ける。こりゃあビールが旨いぞ。鉱泉に着くとテン場には思ったほどテントが張られてない。適当な場所を見つけ荷を下ろす。もう、我慢できない。石川さんと2人でキャンプの受付を済ませ、ビールで乾杯。藤野さん、お先です。テントを張り終えると「腰の具合が今ひとつ」の藤野さんも到着。まだ真っ昼間だが、3人で再び乾杯!! 雲ひとつない快晴に山々が綺麗に輝き、ビールも旨い。こりゃあ止まりませんな。今から思えば、主食を摂らずに呑み始めてしまったのが過ちだったのだが後の祭り。主稜登攀当日の早朝、目が覚めた瞬間、二日酔いの気配。
 一方、酒の仕業か定かではないが、石川さんは胃痛で一睡もできなかったらしい。自分もはっきり言って頭は痛いし、吐き気もする。でも、こんなんで登れませんなんて格好悪過ぎるので、朝ごはんのうどんとお餅を無理矢理胃に入れて、時おり戻しそうになるのを我慢しながらゆっくり準備をする。結局石川さんは体調が戻らずテントキーパーとなった。用意ができ藤野さんと二人で出発。行者小屋に着くと文三郎尾根を登っている人達が見える。藤野さんが言うには、文三郎尾根の途中からトラバースして取り付くとの事。生返事しながら眠気を必死に振り払おうとするが、歩きながら瞼が重くなる。これは相当コンディションが良くない。でも、今更引き下がれない。とりあえず取り付きまで頑張ってみよう。トラバース地点で先行パーティーがいたので、しばし待機。風があり寒くて仕方がないが、藤野さんは平気な様子。
 先行パーティがトラバースをしていくので、我々も後を追って、「はやく行きましょう!」と言うと、藤野さんは「まだ早い。ここでもうしばらく待つ」とのこと。岩場を前にすると不思議なもので、早く登りたくてウズウズしてくるんです。頃合いを見てトラバースを開始。雪は適度に柔らかくアイゼンがよく利く。長いトラバースだった。取り付きに着くとまだ先行パーティが準備中であったが、すぐにトップが、アイゼンをガチガチ鳴らしてチョックストーンを登りはじめた。よいタイミングで到着したものだ。これを見るとアドレナリンが大量に分泌し、完全に覚醒しました。もう眠くもなければ、頭痛も吐き気もしない。ただ目の前のルートをどうやって登ってやるかしか頭にない。やがて我々の番になった。トップは藤野さん、やはりアイゼンを鳴らして登っていき、姿が見えなくなった。「OK」が聞こえるまで待つ時間は長く感じる。いよいよ登攀開始!!岩に取り付いてみると、ガバがあり見た目よりは登りやすいと思った。登って行くと数箇所のピナクルにスリングで中間支点がとってあった。これを順に回収しながら登って、1ピッチ目の終了点に到着した。つるべで登るなら次ぎは私がトップであるが、まだトップをやるにはいろいろと課題があるので、4ピッチ目まで藤野さんが連続してリードしてくれた。この間に確保支点の作り方や、確保器のセット方法などを現場で見て学ぶ。
 5ピッチ目よりつるべにして、以降は、トップとセカンドが入れ替わりながら進んだ。やはりこの方が早い。これまで途中ソロクライマー2人に抜かれた。ソロはロープを使わないので随分早い。ロープ無しでも問題無く登れそうなピッチもあったが、我々は結び合ったまま1ピッチづつ確実に詰めて行った。主稜の核心部は1ピッチ目、次の核心部が上部壁の凹角とのことだが、順番からここはリードさせて貰った。藤野さんとはここ数ヶ月、ジムで度々一緒に練習しているし、日和田山でも一度ではあるがアイゼンでの岩トレもやった。アイゼンでも岩はそこそこ登れる自信はあった。幸いにも岩には雪がついておらず、登りやすかった。下から「中間支点が取れるところは取って!!」と言われたが、面倒で「このまま行っちゃいます」と登ってしまった。抜けたところの岩にスリングを被せて、ヌンチャク掛けてロープを通した。その後のピッチもつるべで順調に進んだ。やがて終了点の大きな岩に到着した。ここではロープを畳まず、結んだまま緩い斜面を登って赤岳北峰に到着した。無雪期も含めて今回が赤岳初登頂!! ここでロープを畳んで装備を外した。下山はこのまま展望荘―地蔵尾根の予定であったが、赤岳初登頂とのことから、藤野さんが「南峰にも寄って、文三郎を下ろう!」と言ってくれた。南峰でもゆっくり眺望を楽しんだ。遮るものは何もなく見渡す限り山だらけ。登った山、登りたい山、いろんな山に想いを馳せつつ下山を始める。鉱泉に着くと、石川さんが私のキャンプ道具も片付けてくれていた。聞けば、だいぶ体調も良くなったとのこと。
 各々荷物を整理し美濃戸に向けて下山を開始した。今回の赤岳主稜は、事前に聞いてはいたが意思表示をしなかったため、藤野さんと石川さんの二人で計画されていた。直前になって参加したいと申し入れて、メンバーにいれて貰った。ラッキーであった。2日間好天に恵まれ、ちょっと呑み過ぎたが旨い酒を楽しめたし、初めての赤岳を主稜から登頂できた。お二人に感謝しています。

 



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