連載講座「テーピング」

杉坂千賀子

◎第1回 「腰痛のためのキネシオ・テーピング」


<完成形。横方向にしわが沢山出来ていることに注目。写真ではトレーニングウェアの上に貼っていますが、実際は肌地に貼ります>

多くのスポーツアスリートが少なからず様々な身体的な悩みを持ちながらスポーツを していることが多いように、登山者もひとりひとりが何らかの悩みを抱えていることが多いようです。それらは慢性的的になっている腰痛であったり、癖のようになっている捻挫であったりします。過去の怪我などが原因のことも多く、もはや整形外科へ行くほどではないけれども、常に痛みに悩まされている。そのような方々も多いと思います。症状を軽くするためには日ごろのストレッチング、またトレーニングなどが欠かせませんが、山行中はもとより前後の処置としてテーピングをすることにより症状を軽減するなどの効果が期待できます。その方法のいくつかを連載でご紹介します。

〔テーピングの種類〕・・・いわゆるテーピングテープは素材の特徴から「非伸縮性テープ」と「伸縮性テープ」に分けられます。書籍などではいろいろなテーピング法が紹介されており戸惑う方も多いかと思いますが、主として固定に使われ、応急処置に効果が高いのが「非伸縮性テープ」で、筋肉のサポートや治療の一環で使用されることが多いのが「伸縮性テープ」といえましょう。そして「キネシオテープ」は伸縮性テープの部類に入ります。

〔キネシオテーピングとは〕・・・今回とりあげる「キネシオテーピング法」に使用されるのが「キネシオテープ」(後注)です。キネシオテープとは筋肉に近い性質のキネシオテープを使用して自然治癒能力を高めて障害回復や内蔵機能を回復する治療法に使用されるテープのことです。

〔効果としくみ〕・・非伸縮性のテープを施す場合と違い、伸縮性のあるキネシオテーピングは「筋肉に沿って筋肉や皮膚を伸ばした状態で、テープは伸ばさずに貼る」。これが大原則になります。このように貼ることにより筋肉や皮膚が緩んだ時にテープにしわがより、皮膚下のリンパ液の流れが良くなるなどの効果が得られるのです。キネシオテーピングの効果は貼ることにより@筋肉の機能を正しくする、A血液リンパ液の循環を良くする、B痛みを抑える、C関節のずれを正す、などの効果があります。

【腰のテーピング】

登山される方々は前述のように慢性的な腰痛に悩まされている方も多いと思います。今回は登山中に使用する筋肉「脊柱起立筋」(図ー1)の疲労からくる腰痛のケアーをご紹介します。脊椎は周囲を取り巻いている筋肉(いわゆる背筋)によってしっかりと支えられていますが、この筋肉に何らかの急激なまたは徐々に大きな負荷がかかり障害が発生し腰痛が起こることがあります。登山においては荷物を背負うことで背筋を使い、また下山時にはその状態で姿勢を維持するためにこの筋肉を使うので特に負荷がかかります。ですから腰痛軽減のためには日ごろから腹筋や背筋を鍛え正しい姿勢を保つ、などの心がけが必要となります。

【テーピングの実際】

《用意するテープ》 巾5cm、長さ30cm(腰の中心から立って肘の位置くらいまでの長さ)
@テープを5cmくらい残してY字形に切れ込みを入れる(図ー2)。
A立った状態で、切れ込みのない端を背骨の末端の平になった部分に貼る(図ー3)。

          
<図−1 脊柱起立筋。特に下りで負担が増す>  <図−2>           <図−3>

B腰をできるだけ前に曲げる状態で前屈し、背骨の真上を避けて両側の盛り上がった筋肉の上にテープを伸ばさずに載せるように貼る(図−4〜図−6)。


    <図−4>         <図−5>         <図−6>

C貼り終わって真っ直ぐ立ち、テープにしわが横方向沢山出来ていることを確認する(冒頭の写真)。

【ワンポイントアドバイス】

テープを貼る時は、伸縮性があるとは いえテープは伸ばさずに貼ります。該当 する筋肉を伸ばした姿勢になり、コツと しては皮膚をひっぱるように伸ばし、そ っと置くようにします。その後数回こす るとしっかりとつきます。テープは2〜 3日は貼ったままで風呂などに入って差 し支えありませんが、肌の弱い人はあら かじめパッチテストをするとよいでしょ う。また、貼ったテープは予想以上に肌 になじんでいますのではがすときは注意 が必要です。なるべく体毛に逆らわない方向に、テープを持ち上げるのではなく皮膚をテープからはがすように剥がすと 肌を傷めません。

(注)キネシオテープは筋肉と同じ伸縮率でつくられています。いくつかのメーカーが伸縮性のあるテープを発売していますが、比較してみると糊のつき方、粘着力、厚さ、伸縮性にも違いがあることがわかります

 


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