◆〈対談〉 トレイルランニングを語る 矢澤昭文×金田安代
     〜 獣になったような、自然と一体化したような〜 

 日本山岳耐久レース、通称ハセツネといわれる山岳マラソンの人気がこの数年急激に高まり、2,000名
という募集人員がすぐに一杯になり、申込日の翌日にはもう締め切りになってしまうという状況である。
 山岳マラソンも今や「トレイルランニング」というジャンルに定着したようである。新緑に映えつつあるこの
時節の山々を眺めていると、そのトレイルを駆けてみたくなる。今回はそのトレイルランニングについて、
各地のレースをいつも一緒に走っている矢澤昭文と金田安代が対談をした。

  
                       (ハセツネ3度目で50代女子4位、表彰を受けた金田)

【昨年のレース】

矢澤:良い季節になり、新緑の中の山道を駆けてみたくなるね。
金田:そうだね。レースとは関係なくゆっくり走れば気持ちいいしね。
矢:ところで今年のレースの予定はどうですか。僕は3月に地元の県民の森での〈新城トレイルレース〉が
  1戦目だったけど。そして次は7月の初めに〈志賀高原〉での50kmと、同じ7月の中ごろに〈おんたけ〉
  の100kmには出る予定だけど。
金:私も出たいけど今年は転勤もあり、今のところトレーニングが思うようにできていないのでなんとなく
  不安が先にある。ただ〈おんたけウルトラトレイル100km〉は、去年出てとても感動したので今年も出
  たいと思っている。
矢:今からトレーニングしていけば十分間に合うと思うよ。なにせ昨年は50歳代女性の第2位の実績が
  あるんだから。そのおんたけ100kmは夜中の午前0時スタートというのがいいね。みんなヘッドランプを
  灯けて走り出すのはその瞬間がとても感動的だった。走っているうちに少しづつ明るくなってきてそれも
  とても良かった。
金:去年は天気も良かったしね。だけど山の中ではなくて林道を走るコースなので、陽が昇ってきて日中
  は暑さでちょっとまいった。自然のエイドステーション(*所々に小沢がある)の度に水を補給していた。
  それで最後まで行けた気がする。
矢:そうだね。暑さにはまいったね。また100kmはさすがに長かったけど、あのスケールの大きさはやはり
  ゴールできた時の喜びが一入だった。他はどうだった?
金:同じおんたけでの〈スカイレース〉があったけどこれはかなりきつかった。
矢:標高1,000mの麓から御嶽山のてっぺんまでひたすら登り、御嶽山をほぼ一周して今度はひたすら下っ
  てくるというレースだったね。標高3,000mでは平らな部分でもとても走れない。また下りもあれほど続くと
  苦しいね。
金:それから志賀高原でのレースでは雨が強くて濁流の山道だった。まるで泥んこ遊び・・・。
矢:6月だったと思うけどさすが豪雪地帯、コース中にまだ雪が残りそれが雨の水溜りに浸かっていてだん
  だん足が冷え、また風も強く身体が硬直してきた。いずれにしても厳しかったレースほど印象に残ってい
  るね。

【トレイルランニング歴】

矢:昨年は超人気のハセツネにも参加できた。第一関門まで割りと調子良かったけど、その後は最後まで
  バテ気味状態だった。西原峠でシリウスの西山常芳さんに励まされ、それで何とかゴールできたけど、
  長い距離は走ってみないと分からないところがあるね。このゴールでハセツネは8回出て7回完走した
  ことになるけど、何とか10回完走して賞を受けたいね。僕のレベルでは入賞なんて全く縁がないからね。
  8年前にハセツネに初めて出たのが、僕の初トレイルランレースだった。その年の4月に雪山で滑落し、
  山が少し怖くなっていた。そういう時にハセツネを知った。       
  当時はまだブーム前だったけど、大勢の参加者がいたね。何も分からなくて長距離に不安もありシュラ
  フカバーもザックに入れたし、サポートタイツがあることも知らなかった。夜中になり眼鏡は曇るし、ペース
  が掴めず関門ごとで20〜30分くらいずつ休んでいたなぁ。でも何とか完走できたし本当にヘトヘトになって
  のゴールに感動し、後続の他の選手がゴールする度に感動していたなぁ。それでずっと続いているんだと
  思うよ。金田さんはどうですか?
金:私も初トレランはハセツネだった。山へ行くにはトレーニングが必要と矢澤さんに言われ走り始めたんだ
  けど、先ずはハーフマラソンに出て、フルマラソンに出て、そして3年前にハセツネに出た。それからは誘
  われるままに出ていた。 
矢:そのハセツネで日の出山からの長い下りで転倒し、膝を打ってそのまま走り続けてゴールしたんだけど、
  帰ってきてお医者さんに行ったら、膝の骨にヒビがはいっていると言われたんだったっけ。よく走ったもん
  だね。
金:その後1カ月くらいは足を固定して、だけど仕事は休めなかったので固定したまま仕事に行ってたけどね。
  競技中は夢中で痛みはあまり感じなかったけどね。

【トレイルランニングの魅力は?】

矢:トレランはどう?適度な下りで走っていると何か獣にでもなったような、それは自然と一体化したような気分
  になることがあるんだけど。また同じ走るにしてもロード、つまりアスファルトの上を走るのとではえらい違い
  がある。土の上を走る方が断然気持ちがいい。それにロードだとずっと走り続けなければならないみたいな
  気分があるが、トレランの場合は疲れたら歩けばいいし、止まって景色を眺めて休みながら進めばいいって
  いうところがある。まあ僕の力では上りでは走れないし、下りでも状況によっては走れないこともある。それ
  でもとにかく気持ちがいいね。
金:私は誘われるままに行くっていう感じだけど、ただやりようによっては軽い荷物で山登りができるっていう
  気持ちにはなった。その気軽さがいいかな。
矢:一昔前に“カモシカ山行”という言葉があったけどそんな感じかな。トップレベルの人たちはランナーの世界
  だろうけど、僕らのレベルはカモシカ山行の世界かな。
話はまだまだいっぱいありますが今日のところはこの辺で・・・どうもご苦労さまでした。
  最後に一言、おんたけ100km出なさいよ。


    山行報告目次へ       トップへ